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カテゴリ:クラシック音楽の話( 29 )

遊音地@横浜みなとみらいホール〜その3

このシリーズ最終回となる「バックステージツアー」のレポートです!

今回の企画は親子向けで「ピチカートツアー」という名称でした。私だけでは参加出来なかったかも⁈小学生の娘と2人で参加しましたが、10時半受付開始のところを10時過ぎから並んで、なんとか滑り込みセーフという人気ぶりでした。
案内してくださったのは、みなとみらいホールの事業計画の段階から携わっていらしたという中村卓史さん。ホールの隅から隅までご存知で、たくさんのウンチクを語ってくださいました。
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ツアーはモール側入口の壁画前から出発し、
正面玄関→クローク、2階へ上がって大ホール客席→ステージ、ステージ下手側通路から舞台裏へまわり、楽屋2部屋→アーティストラウンジ→荷捌場→楽屋口、地下へ降りてリハーサル室→大部屋楽屋→ピアノ庫→ピアノ搬送用エレベーターにて小ホールのある6階→屋上庭園→関係者用エレベーターにて1階→正面玄関前ロビーに戻る(以上記憶で書いてます、抜けてるかも)
というルートでした。

大ホールのステージ上から指揮者用の第1楽屋、アーティストラウンジあたりは最高に興奮しました。オーケストラ用のホールや設備には全く縁がありませんからね。指揮者用の楽屋には、アプライトピアノが1台、シャワー室もありました。リハーサルから開演までの間を楽譜とともに、あるいはピアノを使って過ごす、指揮者の部屋。「小澤征爾さんなんかはシャワーは使わずに、必ず乾いたタオルを使用されるんですね」などと、具体的なお名前が上がると興奮度もマックスです!
アーティストラウンジはそこそこ広く、でも本当はもっと広さが欲しかったそうです。正方形の4人掛けのテーブルが舞台の真裏にあたる位置に、6〜7くらい横一列にありましたでしょうか。壁沿いには楽器を置くための棚が作りつけてあり、これはみなとみらいホールの自慢で、どの楽団にも喜ばれるそうです。「高価な楽器ですから、皆さん必ず持って歩かれます」との説明に深く頷くギター弾きの私。ピアノ弾きの娘は無関心。飲み物が提供されるカウンターがあり、クッキーなどのお菓子が並べてありました。

大ホール自体の説明も興味深いものでした。このホールは、公設民営というのかな?横浜市から「2000席のクラシック専用ホールを」という依頼が先にあったそうで、2020席のシューボックス型ホールとして完成しました。2000席でシューボックスというのは、実はかなり無理な設計。(土地の形状の制限からワインヤード型は設計できなかった。)2階後方の左右バルコニーでは舞台の半分以上が見えないような席もあるそうですが、どの席からも指揮者だけは見えるように設計を依頼したとのことでした。ホール全体の施工にかける費用を計画当初よりも節約した中で、音響設計に関わるところではビタ一文もケチっていない、と胸を張っておられた中村さんです。

ホール施工の費用が節約されたと書きましたが、これはみなとみらいホールが建てられた当時の時代背景のためです。みなとみらい地区の開発は今から30年前の横浜みなとみらい万博開催を機に始まり、ホールが計画されたのは25年前の1995年、バブルの時代です。ところがその後すぐにバブルがはじけて経済が暗転、長い不況の時代となりました。バブルの時代に計画されたとおりには実行できなかった施工案が多くあり、例えば正面玄関などはあまりにも簡素な仕上がりになったために、完成当時案内された横浜市長が「ここは裏口かね?」と言ったというエピソードも。ホール内外の装飾は経済が上向けばいつか足していくことも可能だろう、しかし、音響は一度出来上がったものを変えるのは非常に難しい。しかも、音が良くないという評価が定着すれば一流のオーケストラを呼ぶことも難しくなる。音作りに費用を惜しまなかった理由は明確でした。納得です。

このように、ちょっと子どもには難しいだろうなーと思われるウンチクを聞きながら、あっという間の1時間でした。娘は、ステージ上に置かれてあったスタインウェイのピアノに見とれ、地下のピアノ庫で「どれがベーゼンドルファー?」「わかんなかったー」とがっくり。いつの間にかピアノ弾きらしくなっていて面白かったです。ピアノは地下のピアノ庫からセリで舞台に載せますが、みなとみらいホールでは舞台の端にピアノ用のセリを設計したそう。サントリーホールでは、舞台中央にピアノセリがあり、演奏時も奏者はセリ上で弾くことになるのだそうで、これを不安に思う奏者もいることなどを聞いての配慮なのだとか。本当に興味深い話ばかりでした。

こうしたツアーは、他のホールでも開催されているのでしょうか?ぜひ色々なホールのウンチクを聞いて、比べてみたいものです。とても楽しく参加させて頂きました。
これで「遊音地@みなとみらいホール」のシリーズはおしまいです。お読み頂き、ありがとうございました!
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by yuko_kodama | 2019-08-19 05:32 | クラシック音楽の話

バンドネオンとタンゴ

バンドネオンという楽器とタンゴについて、少し考えてみました。

今週末の土曜日は、アンサンブル・フェスティバル2019の本番です。ゲストコンサートの部に出演されるギターとバンドネオンのデュオ“El Tango”のお2人も無事に到着され、昨日はアンサンブル「カンパニージャ」にタンゴのレッスンをして下さいました。今回のフェスティバル、カンパニージャでは「ラ・クンパルシータ」と「リベルタンゴ」の2曲のタンゴをプログラミングしています。もちろん、ゲストの彼らに敬意を評してのプログラム。

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さてレッスン開始。
1曲目「ラ・クンパルシータ」を聴き終えると、
「タンゴの雰囲気を感じてもらおうと、楽器を持ってきたよ」とおもむろにバンドネオンを取り出したのはオルランドさん。どうも我々の演奏には、まだタンゴらしさが欠けていたようです。

「もっとスタッカートを効かせて、こんな風に。ギターだと難しいかもしれないけど。
ザッザッザッザッ!
「その後はうんとレガートに」
ブォーンブォーン!
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いや、参りました。
バンドネオンすごい。

実際のレッスンではこの後、ギターのカルレスさんが、これらの表現をギターで実現するには、という実践的なテクニックを教えて下さったのですが、帰り道も私の頭の中はバンドネオンでいっぱい。あの、いかにもタンゴな軽くキレのあるスタッカート、そして重みのあるレガート、圧倒的な音圧のロングトーン。

ブォーンザッザッザッ、ブォーンザッザッザッ

ん?待てよ?
バンドネオンの楽器としての特徴がいかにもタンゴらしいのか?
卵が先か、鶏が先か。
タンゴという音楽そのものが、バンドネオンの得意な表現に合わせて進化してきたのかも?

軽いスタッカートは、ボタン式のキーボードならでは。アクションが少ないので一瞬で音が出て、指を離せばすぐに音が消える。ギターなどの弦楽器では弦の振動を消さないとスタッカートになりません。(カルレスさんは開放弦を使わずに左手を離すことでスタッカートを実現していました。)ピアノは構造が複雑なので、音を出すにも消すにも少し時間がかかる。やはりバンドネオンのようにはいかないのです。
重みをかけて引っ張るような一拍目のアクセントも、まさに「引っ張る」アクションで発音するバンドネオンだから実現しやすいような気がするし…。

そういえば、レッスンでは興味深い話もありました。私たちの使っていたギターアンサンブル用に編曲された「ラ・クンパルシータ」は4分の2拍子で書かれていたのですが、オルランドさんの話では、それはとても古いタンゴのスタイルだとのこと。昔は4分の2拍子で捉えて、もっと速く演奏されていたのだけど、今はタンゴは必ず4分の4拍子で、4つの四分音符を強・弱・中強・弱のアクセントをつけて捉えるものだと。そして一拍目のアクセントは重みをのせて引っ張る、後の3つはスタッカート。
ブォーンザッザッザッ
でも、逆にいうと、古い時代は今のようなタンゴの拍感ではなかったということ。
古い時代?バンドネオンの登場っていつだろう?

目の前でバンドネオンを聴いてきて、私の今の感じとしては「現在のタンゴの表現はバンドネオンが作ったものだ」という方に傾いていますが、バンドネオンとタンゴ。
どちらが鶏でどちらが卵なのか。

正解は分かりませんが、
どうぞこのバンドネオンの圧倒的なまでの「タンゴ感」を目の前で味わいに来てください。
6月8日(土)、大田区民プラザ大ホール 午後3時開演です!!
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by yuko_kodama | 2019-06-06 04:50 | クラシック音楽の話

眠りのための音楽

夏休みです。
家族で旅行してきました。ものすごく久しぶりの国際線。今時の飛行機はすごいですね。タッチパネルのパーソナル画面でやりたい放題!6時間のフライトが、あっという間に感じました。

行きのフライトのオーディオにはクラシックが2チャンネルしかなくて不満だったのですが、帰りのフライトは充実の9チャンネル!わくわくしながら吟味して、「良質な睡眠のための音楽」というチャンネルを聴いてみました。もちろん、絶対に寝てやるもんか!という気持ちで。

プログラムは
バッハ「羊は安らかに草を食み」(これは毎朝ラジオを聴いていた15年前くらいの「朝のバロック」のテーマ曲に使われていて、とても懐かしい)、モーツァルト「アイネ・クライネ」の2楽章、ブラームスの子守唄など、有名かつ穏やかな曲が並んでいて、確かに聴き心地がよくてウトウトしてきてしまいます。結果、30分でダウン。残りの曲は記憶にありません(^^;。ちょっと悔しい。

飛行機でも必ずクラシックを聴いてしまう、やっぱり好きなんだなーと思います。そして、色々聴いているうちに、最後にはギターの音色が聴きたくなってくるのです。

明日から練習再開します!









by yuko_kodama | 2018-08-13 22:28 | クラシック音楽の話

うたのおねえさん

毎朝、2才の次女とNHK Eテレの「おかあさんといっしょ」を見るのが日課です。

昨年4月に交代した新しい「うたのおねえさん」(あつこおねえさん)も、まもなく交代から1年。だいぶ歌の感じが変わってきました。

交代当初は歌声が透明なあまり、おにいさんの声と重なると聞こえなかったり、ひょうきんな歌では物足りなかったりしたのですが、最近は地声の混ぜ方(というのかな?)にも慣れたようで、聞こえないこともなくなりました。それと同時に、「音大出身の声楽家」という感じの歌い方が薄れてしまって残念だな、と思う部分もあります。

昨年9月の「ブーケ・デ・ボンボン」のコンサートでソプラノお二人とご一緒させて頂いて以来、色々なシーンでこれまでよりも歌に対する興味が深まっています。
私にとって、あつこおねえさんの醍醐味はやはり専門的な勉強を積んだ声楽家ならではの圧倒的な声量です。「おにのパンツ」で披露してくれたようなオペラ歌手のような発声を生かせる歌がまた聞きたいなあと思いながら、毎朝見ています。





by yuko_kodama | 2017-01-18 13:09 | クラシック音楽の話

初めての世界

本日、「ブーケ・デ・ボンボン」の全体リハーサルに行って参りました。

初めてお会いするピアニストの山内さん、ソプラノの高嶋さんと村岡さん。皆さん素敵な方々でいらっしゃいました。そして、何よりも他楽器や声楽とのアンサンブルが大変新鮮でした。特に声楽の方とは今まで全く接点がなかった上に、コンサートなどもあまり聴く機会がありませんでしたので、私にとっては初めての世界。

今回よく分かったのは、「歌うように演奏する」ことと「歌う」ことが、似て非なる、全くの別物であったということです。本当に歌を理解して自分でも歌えるようになれば、両者を限りなく近づけることは可能だと思います、もちろん。でも、やはり同じにはならないのではないかな。

歌や吹奏楽器は、息を吸わないと音が出ない。当たり前ですが、私にとってはこれを意識するのが本当に難しかったです。間を取って深く息を吸い込むブレスもあれば、フレーズが切れないようにこっそりと「盗む」ブレスもあります。そのあたり、尾野さんや山内さんは素晴らしく慣れていらして、大変勉強になりました。

この感覚を忘れないうちに練習練習!!








by yuko_kodama | 2016-08-30 21:24 | クラシック音楽の話

題名のない音楽会

10日(日)放送の「題名のない音楽会」をたまたま見ることができました。この日は「クラシック新世紀の音楽会」と題して葉加瀬太郎さんをゲストに迎え、司会の五嶋龍くん(つい「くん」付けで呼んでしまいたくなる龍さん、もう立派な大人です。)と素晴らしいヴァイオリンの競演。
なかでも、エンディングに演奏された葉加瀬氏の代表作である「情熱大陸」のセッションは、テレビ放送であることを忘れるくらいにリアルな演奏の楽しさが伝わるものでした。あの時間、演奏していた二人が誰よりも音楽を楽しんでいたことは明らか。ああいう演奏を聴けると、本当に気分がハッピーになります。

終演後に
「あ〜〜楽しかった!!」
と心から思える演奏は、アンサンブルの醍醐味。ソロ演奏では、なかなかこの楽しさは味わえません。なぜか?「楽しい」という気持ちは人同士が作用し合うことで生まれるからだと思います。この楽しさを、ぜひ多くの人に体験経験してもらいたい。今年はまた、横浜教室でもアンサンブルのレッスンを再開していきたいと思います。

ちなみに、ソロ演奏がうまくいった時は「あ〜〜気持ち良かった!!」
ですね。

題名のない音楽会 1月10日放送
「クラシック新世紀の音楽会」
http://www.tv-asahi.co.jp/daimei_2015/sphone/broadcast/0013/

















by yuko_kodama | 2016-01-12 16:08 | クラシック音楽の話

野望達成!

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今週月曜日の横浜レッスンです。先日来抱いていた野望、とうとうレッスン室のピアノを全開にして弾いてみました。
すごい!響きが全然違いますね!感動しました。

こうして時々こっそり練習しているピアノですが、弾いているのは高橋はゆみ作詞作曲の「ね」という合唱曲の伴奏です。
http://youtu.be/ThR5u8K5q0g

これを卒園する子ども達と歌うのかと思うと、ちょっとほろりと泣けてくる、とても優しい雰囲気の歌です。

この優しくて甘い雰囲気は、「変ホ長調」という調性の特徴です。有名なところでは、ソチオリンピックで浅田真央選手が滑った(そして残念ながら大失敗に終わった)ショートプログラム曲、ショパン作曲の「ノクターン 作品9-2」なんかもあります。
http://youtu.be/jK-Mu1PV6uU

変ホ長調は、フラットが3つ。ミのフラットから始まる音階です。残念ながら、ギターで弾くにはとても難しい調性のため、ほとんど弾く機会はありません。
時々ピアノを弾くと、こういう色々な調性に触れることができ、気分が変わります。こうした調性の特徴を、ギターを弾いていると忘れがちだということにも気付かされます。

同じ音階でも、調性が変わると雰囲気も変わります。そんなお話も、レッスンの中で少しづつお伝えできたらと思いました。









by yuko_kodama | 2015-02-18 09:54 | クラシック音楽の話

オペラ二題

夏に、メトロポリタン歌劇場(通称Met Opera)の歌手による屋外リサイタルの記事をアップしましたが、やはり、住んでいるからにはぜひとも劇場でのオペラ公演を見てみたいと願っておりました。今シーズン、念願かないまして、昨年秋と今年2月、2回の公演を見ることが出来ました!!

昨年秋は、近所に住むお友達のお誘いを受けて、平日の夜公演を鑑賞。オーケストラ(1階席)の後方の座席でしたが、劇場のつくりのせいなのか、ステージが遠いという感じはまったくなく、迫力ある舞台を楽しむことができました。演目は「ホフマン物語」(オッフェンバック)。
3幕目の有名なデュエット「舟歌」以外は、まったく知らない演目でしたが、事前にあらすじや見どころ(聴きどころ)を調べて頭に入れ、当日は座席前に表示される字幕を頼りに鑑賞。オペラ初心者の私でしたが、とても楽しく鑑賞することができました。タイトルロールはテノールのジュゼッぺ・フィリアノーティ。私は歌手に詳しくないので比較・批評はできませんが、とても美しい声でした。純粋で繊細な、そしてどこか退廃的な詩人の雰囲気がよく感じられる歌だったと思います。素晴らしい歌を聴くと、「すべての楽器の究極の目的は、人間の歌を模倣することですよ」とレッスンで仰っていたギタリスト、ハビエル・ガルシア・モレーノの言葉を思い出します。楽器という媒体を通さない、それだけのことですが、直接的な感情表現という面において、やはり人間の歌を超えるものはないように私も思います。(ただし、人間には出来ないことを可能にするのもまた、楽器なのですが。)
舞台装置や衣装は、どれも物語が分かりやすく、素敵なものでした。特に、第二幕で、二枚の垂れ幕を用いただけで冬枯れの景色を演出していたのが、とてもモダンで美しかったです。三幕のヴェネチアの娼館の場面では、かなりエロチックな衣装のバレエダンサーが出てきてびっくりしましたが(笑)。
とにかく、たとえ音楽や物語を知らなくても、オペラってこんなに楽しめるんだ!!と実感した、私のMet Opera 鑑賞デビューでした。

2回目はつい先週、2月21日の夜公演。この日、アメリカは祝日です。お天気が良くないので、特別何もすることがないね・・・なんて話しながら、テキトウにインターネットを見ていたところ、なんとこの日のMet Operaはプラシド・ドミンゴが出演している!!ということで、急遽チケットを買い求め、一人で観て来ました。演目は「タウリスのイフィゲニア」(グルック)。はて、そんなオペラの演目あったかしら??というような演目でしたが、とにかくドミンゴに会いたい(もちろん客席から聴くだけ)一心だったわけです。
正直に結論からいうと、これはオペラ初心者にはかなり難しい演目でした。とにかく、知っているメロディーもアリアも全然ない。ストーリーはギリシア神話を下敷きにしたもので、ベースとなるトロイ戦争の神話から調べないと、オペラのあらすじだけ調べても片手落ちらしい。そのうえ、全4幕をとおして、舞台はひたすら神殿と隣接する牢屋(?)のみで、場面転換はゼロ。目にも耳にも、ちょっとした忍耐が必要な感じでした。
でもでも、やはりドミンゴは素晴らしかった!!ついでに言うと、ドミンゴが演じたオレステの親友であるピラード役を演じたポール・グローヴズも素晴らしかった。2人は同じテノールですが、声は全然違った印象で、それはもしかしたら年齢の違いから来るものなのかもしれませんが、ドミンゴの深くて陰影にとんだ、そして情感豊かな声と、グローヴズの柔らかく気持ちの良い声が好対照でした。2人が「お前のためならオレが死ぬ!!」と歌いあう4幕の場面はとても感動的でした。
この日の座席は、4階のバルコニー2列目。最上階なので、ものすごい高さから舞台を見下ろしている感じで、高所が苦手な私は客席についてしばらくは心拍がかなり上がっていたと思います(笑)。しかし、会場が暗くなり舞台のカーテンが開くと、アラ不思議。舞台を見下ろしているという感じがあまりないのです。座席の料金としては、オーケストラの最後方と同じくらいの料金なので、悪い席ではないと分かっていたのですが、あの高さでこれほどの臨場感を得られるというのは驚きでした。ドミンゴ氏、御年70才。とにかく現役で歌っているうちに生で聴けたことが、幸せでした。

オペラ、もう何回か行けたらいいな~。
とりあえず、リンカーンセンター(Metオペラハウスを含む、複合音楽施設)のバックステージツアーがあるようなので、いつか参加してみたいと思っています。
by yuko_kodama | 2011-03-01 13:48 | クラシック音楽の話

ミュージカル「ウェストサイドストーリー」

ミュージカル「ウェストサイドストーリー」を観てきました。

この有名なミュージカルは、1957年に舞台で初演され、その後1961年に映画化されました(ウィキペディアより)。今回私が観た舞台は、今年3月からブロードウェイでリバイバル上演されて好評を博しており、以前から観にいきたいと思っていました。

「ウェストサイドストーリー」は、現代版「ロミオとジュリエット」と言われます。“ストーリーありき”で作られているせいか、もしこれが小説だったら全く面白くないのでは?と思ってしまう所もあります。あまりに唐突で不自然な一目惚れや、くだらない喧嘩、あっけなく何人もが死んでしまう結末・・・。それでも、今回の舞台を観て、私は涙がボロボロこぼれるほど感動してしまいました。これは、超一流の音楽と歌、ダンスのお陰に他なりません。

最も有名なバルコニーのシーンで歌われる「Tonight」。
主役のマリアは「家族が呼んでいる。不審に思われるから、もう帰って。」という割には、恋人トニーと一緒に長々と愛を歌い合うわけで、(家族にバレバレでしょ?)と突っ込みたくなるけれど、その後に訪れる悲劇を知っているので、この美しい歌に感動して涙ぐんでしまう。マリア役のホセフィーナ・スカリオーネは、プロフィールを見ると、オペラ歌手としての研鑽を積んでいるようで、マイクが必要ないのではと思われるほどの素晴らしい声量と歌声でした。

他にも、結婚式の真似事をするシーンで歌われる「One hand, One heart」、悲劇的な状況から現実逃避して歌う「Somewhere」、 兄を殺してしまった恋人を、それでも愛していると歌う「I have a love」など、美しいメロディの数々に、とにかく涙、涙。音楽の力は偉大です。

ダンスシーンも素晴らしかった!
冒頭の「プロローグ」。よくポスターなどにも使われる有名なダンスシーンですが、実際に見ると、ひとつひとつの動きの美しさがよく分かります。ジェッツ団(アメリカ人少年グループ)のダンスでは、ジャンプが、まるで糸でつられているかのように軽くて高いのが印象的でした。対するシャーク団(プエルトリコ移民の少年グループ)は、シャープでキレのある踊りがカッコいい!!

体育館でのダンスパーティのシーン。
ジェッツ団のリーダー「リフ」と恋人「ヴェルマ」、シャーク団のリーダー「ベルナルド」とその恋人「アニータ」の二組のカップルが踊り比べをするシーンは圧巻で、あまりにそのダンスが素晴らしいために、同じシーンで演じられたと思われる主役のトニーとマリアの一目惚れの演技が全く記憶にありません。

私の座席は、2階席の前から3列目という素晴らしい席でした。舞台両脇のバルコニーでパーカッションの演奏をしていたのですが、それがとてもよく見えて、これまた面白かったです。劇の性格上、ラテン音楽の要素が多く入っていて、パーカッションの二人は大活躍でした。オーケストラピットの指揮者もよく見えました。指揮者はピット内に立っていますが、手だけが舞台上からも見えるようになっており、舞台の役者さんとピット内のオーケストラの両方に指示を出すのです。とても面白いです。生のオーケストラと歌ですから、きっと1日として同じ演奏になることはないのでしょう。

ちなみに、今回のリバイバル上演では、初演時よりも大幅にスペイン語の台詞が増やされています。プエルトリコからの移民という設定に近づけるための演出とのことですが、ワンシーン丸ごとスペイン語、という箇所もあり、スペイン語が分からない人には大変です。でも、これは近年ヒスパニック系の住民が激増しているアメリカで、スペイン語が第二公用語ともいうべき地位を確立しつつあることも背景にありそうです。私は、忘れかけたとはいえ、まだ英語よりもスペイン語のほうが聞き取りがラクなので、これには助けられました。

ブロードウェイには本当にたくさんの劇場があって、たくさんの演目が毎日、日によっては1日に2回も上演されています。そのひとつひとつの劇場の中で、これだけの感動が日々生み出されているのかと思うと、気が遠くなりそうです。すごい場所です、ブロードウェイ。
by yuko_kodama | 2009-12-15 12:41 | クラシック音楽の話

Bryant Park Fall Festival

ブライアントパークは、マンハッタンの42丁目5番街から6番街にかけて伸びる、芝生の敷かれた静かな公園です。威厳ある市立図書館の建物と、青々とした芝生が広がるその1ブロックは、背の高いビルばかりが立ち並ぶオフィス街の中で、まるでオアシスのように感じられます。この公園で行われた秋のフェスティバル(無料屋外コンサート)に行ってきました!

10月といえば、ニューヨークではコンサートシーズンの始まりです。カーネギーをはじめとする名高いホールの数々では、毎夜さまざまなコンサートがひらかれ、世界三大歌劇場のひとつといわれるメトロポリタン歌劇場でのオペラも始まりました。演奏家ばかりでなく聴衆も、世界中から集まっていることでしょう。
それらに足を運べない人間にも、せめて芸術の秋のおこぼれを・・・ということなのでしょうか。このブライアントパークのフェスティバルは、2週間にわたり平日は毎夜、クラシック、ジャズ、ダンスなど、さまざまな分野のアーティストが出演していて、舞台が設営されたテラスの座席以外でも、芝生でピクニックをしながら鑑賞することも可能です。だいぶ寒くなってきましたが、子連れでピクニックをしながら無料で音楽を楽しめるとあっては、行かない手はありません。私が出掛けたのは、9月29日、10月1日、7日の計3日間で、9月29日と10月7日は室内楽、10月1日はオペラのガラコンサートでした。

室内楽は、NY市内のブルックリン区にあるBargemusicというお店から、各日数組の室内楽グループが出演して、弦楽四重奏からピアノソロ、軽いジャズまで幅広い演奏内容でした。10月はじめとはいえ、日が落ちれば気温10度台前半まで冷え込むNYの秋。その寒さの中で素晴らしい演奏を披露するプロ根性には恐れ入ります。また、一般市民に公開された無料コンサートでありながら、ストラヴィンスキーやショスタコーヴィチなど、あまり大衆的とは思えないプログラミングも面白い。そして、そのショスタコーヴィチに、帰宅途中のサラリーマンや学生が足を止めて耳を傾ける姿が、いかにもここがNYであることを象徴しているようでした。

10月1日のオペラガラは、メトロポリタン歌劇場の若手育成プログラムに在籍中の歌手が4人出演していました。この日、マンハッタン名物ともいえる渋滞に巻き込まれ、かなり遅れて会場に到着した私は、残念ながら30分ほどしかコンサートを聴けなかったのですが、椿姫の「乾杯」やジャンニ・スキッキの「私のお父さん」といった、名曲中の名曲を聴くことができて嬉しかったです。この日も冬のような寒さの中、肩を出したドレスにショール1枚はおっただけの女性歌手たちのパフォーマンスに、すごいなぁ・・と思った私です。

ところで、このフェスティバルに出演していたのは、もちろん素晴らしいプロの演奏家たちですが、世界的に有名な方々ではありません。それでも私は、どんな有名な演奏家のCDを家で聴くより、たとえ無名の演奏家であっても生の演奏に接することを好みます。生の演奏には必ず、演奏家と聴衆との間にできる「空気」が存在するからです。この「空気」を演奏家と聴衆が共有することによって、「その場限り」の演奏が実現するというのが、生演奏の魅力だと思っています。CDで聴いたらなんてことないような曲が、生で聴くと素晴らしい迫力をもって心に響いてきたりするのは、この「空気」のためだと思います。
これは私個人の意見で、もちろん、素晴らしい演奏家のCDを家で聴くほうが良いという意見もあるでしょう。そして、それはそれで否定されるべき意見でもありません。要するに好みの問題です。

10月も終わりに近づき、NYの短い秋も終わりです。こうした屋外イベントも、来年の夏までおあずけ。でも、来夏はぜひ、セントラルパークで行われる夏の風物詩、NYフィルの野外コンサートを聴きに行きたいものです。
by yuko_kodama | 2009-10-21 11:20 | クラシック音楽の話