ハビエル・ガルシア・モレーノ レッスン

2006年2月24日、来日中のスペイン人ギタリスト ハビエル・ガルシア・モレーノのレッスンを受けました。

夜遅い時間にもかかわらず、熱心な見学者がいる中、レッスンを受けたのは私を含めて3名。受講曲は、私が「アラビア風奇想曲」(タレガ)、Tさんが「魔笛の主題による変奏曲」(ソル)、Iさんは「3つのメキシコ民謡」(ポンセ)から第2曲でした。

モレーノ氏のレッスンは大変分かりやすく、受講者だけでなく、聴講者にも得るところの多いものだったのではないかと思います。その中身は、大きく二つに分けて、右手のタッチに関するものと、メロディの歌わせ方に関するものでした。

最初にレッスンを受けた私は、まず右手のタッチに関して多くのアドヴァイスを受けました。アルアイレのタッチでより大きな音量を得るため、右手のポジション、指を抜くときの角度などについての細かい指導。さらに、その練習方法を詳しく説明してくれました。氏の演奏時に聴く、素晴らしい音量と音色についての秘密を、惜しげなく公開してくれたわけです。
このときに氏が説明していたのは、「どうしたら最も弦を振動させることができるか」ということに尽きます。弦を振動させなければ音が出ない。このことは、私もよく承知しており、生徒さんたちにも指導をしている点なのですが、もっと良くすることができるようです。精進、精進!
曲の演奏では、メロディラインの歌わせ方についてのレッスンとなりました。伴奏部の音量をぐっと控え、歌手ならばどのようにして歌うか、それを考えるのだということでした。実際に氏は、メロディラインを何度も歌ってくれるのですが、声も素晴らしく、とても歌が上手い。また、私にメロディの部分だけを演奏させ、氏が伴奏部を演奏するということもしてくれました。このような方法で、容易にメロディの歌わせ方の感覚をつかむことができるのだと、とても参考になりました。

次にレッスンを受けたTさんは、スペインに留学中の若手です。
「魔笛」では、主題のメロディをいかに変奏の中に生かしていくか、ということで、細かなアーティキュレーションにこだわったレッスンとなりました。変奏ごとの特色とテーマとの関連を、分かりやすく説明され、聴きなれた「魔笛」が新鮮な演奏へと変化していくのがよく分かりました。また、古典という決まった様式美の中での表現ということで、音色変化などにも注意を払っていました。古典の楽曲に対するアナリーゼの大切さを改めて感じました。

最終受講者となったIさんは、各地のコンクールなどで活躍中。
受講曲の「3つのメキシコ民謡」は、ポンセの民謡風の作品の代表格。この日のレッスンでは、受講曲だけでなく、ポンセの民謡作品全般に通じる表現のコツがてんこ盛りでした。
まず、民謡であるということは、「歌」を意識して歌わなければならないということ。この曲の難しさは、メロディラインが和音の中に埋もれてしまう危険があることです。伴奏の和音を同時に弾きながらも、メロディだけがはっきりと聞こえるようにしなくてはなりません。また、演奏中に、和音をばらして弾くことを多用すると、実際の拍子から「歌」の部分の音がずれていってしまうこともあります。注意が必要です。
そして、歌と、それに応える「合いの手」の部分を明確に分けて演奏すること。具体的には、「合いの手」部分の音量をぐっと控えることを、この日のレッスンでは要求されていました。こうして整理された演奏は、実際に「歌詞を歌う歌手」と「楽器での伴奏」のように聞えてきて、大変魅力的でした。

おまけとして、Iさんが「ドビュッシーの墓に捧げる」(ファリャ)を受講。時間があまりないため、モレーノ氏が実際に見本演奏をして、それに説明を加えるという形になりました。
まず、この曲のオーケストラ版を聴くことを勧められました。オーケストラで演奏される場合には、どのような楽器がどの旋律を受け持っているのか、それをギターで表現するのです。さらに、「ドビュッシーの墓」という印象を大切に演奏することです。お墓の暗く、怖く、おどろおどろしいイメージから音楽が始まり、中間部にはいかにもファリャらしい音型の出現、さらにドビュッシーの「グラナダの夕べ」のモチーフ。短い中にも盛りだくさんの難曲ですが、まるでオーケストラのように様々な響きを繰り出し、雰囲気を表現していくモレーノ氏の演奏は素晴らしいものでした。あー、私も弾いてみたい!

盛りだくさんのレッスンが終わったのは深夜11時近い時間。くたくたになりながらも、充実感でいっぱいの頭と心で、終電車に飛び乗りました。
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by yuko_kodama | 2006-02-24 16:23 | ギター音楽の話
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