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宮下祥子の新作「Gift」を聴いて

宮下祥子の新作「Gift」を聴いて_d0030554_1141133.jpg 札幌を拠点に、昨今は全国各地でのコンサートや海外公演にもお忙しいギタリスト宮下祥子さんが、3枚目のアルバム「Gift」をリリースされました。ご本人からサイン入りCDを購入し、今、聴き入っております。とても素敵な1枚です。

大作のソナタや難曲を並べた前2作とは趣を異にし、よく知られたメロディーを新たにギター用に編曲した、壺井一歩氏の「新12の歌」をメインに据えた「Gift」。簡単に私なりの感想を述べてみたいと思います。批評ではありません。あくまで「感想」です。

まずCDのジャケット。北大の銀杏並木でロケーション撮影をしたとのことですが、ご本人の「前2作とは全く違う1枚を作りたい」という意気込みを感じます。ドレスアップしてのスタジオ撮影だった前2作のジャケット写真も、とても素敵でしたが、今回は、自然体のご本人を感じられるような写真を採用されています。このことは私に、「大きなコンサートホールのステージ」ではなく、「自宅のリビング」で自然に演奏しているような宮下さんを感じさせてくれました。
「自宅のリビング」といえば、録音の状態も、とても私の好みです。不必要に音を響かせすぎず、タッチや音色が直接伝わるような位置で採音されているように思います。だから、すぐそこでご本人が弾いているような感じがありますね。けれども、ふと音が切れたときや、音が伸びたときには、自然な残響があって美しい。「自宅のリビング」と言いましたが、この感じは、響きのきれいな小さなホールで、演奏者の間近の前列の席で演奏を聴いた感じに近いかもしれません。音がつながっている間は、楽器から直接響く音が聞こえ、ふと音がとまった瞬間、ホールの残響が美しく耳に響く、あの感じです。

収録曲の中では、私は「おぼろ月夜」がとても好きです。透明感があって、ちょっぴり神秘的な和声が、うっとりと夢見心地で歩く春の宵の雰囲気にぴったり。全体をとおして聴くと、かなりドラマチックな編曲をされているもの(「城ヶ島の雨」や「グリーンスリーブス」など)もあり、12曲をとおして聴いたときのバランスも、とても良く考えられているなぁと思います。
こうした選曲をしたときに難しいのは、「甘さ」の加減だと個人的には思います。聴きやすさを意識するあまり、表現や音色が「甘さ」に傾きすぎると、全体としてしまりがなくなり、「心地良くはあるけれど印象に薄い」・・・つまりBGMのようになってしまう可能性があるからです。しかし、このアルバムには、そうした「甘すぎる」味付けがありません。耳に馴染む自然な音楽でありながら、どこかで聴くものに背筋を伸ばさせるような、凛としたところがあるのです。

このアルバムを聴いていたら、久しぶりに宮下さんのコンサートを生で聴きたくなりました。生で聴けたらもっと素晴らしいと思います。そういう期待感を持たせてくれる1枚でもありますね。




*宮下祥子さんの公式ホームページはこちらです
http://www.h5.dion.ne.jp/~sa-chan/index.htm

写真上の「Japanese」をクリックすると、情報ページへ移ります。
紹介した「Gift」についての詳細はもとより、コンサート情報などもご覧いただけます。
また、公式ブログもとても興味深い話題が満載です。
by yuko_kodama | 2010-04-22 11:45 | ギター音楽の話
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