懐かしい声

先日、以前に横浜の教室に通ってくださっていた生徒さんに、ちょっとした用事ができてお電話を差し上げました。毎週レッスンでお会いしていた時と変わらない、懐かしいお声に、メールやお手紙もいいけれど、電話もなかなか捨てたものじゃないと思いました。

その方は、退職されてから初めてギターを習うというので、私のところへいらしたのです。お世辞にも若いとは言えません。けれども、とても真面目で練習熱心です。ゆっくりと確実に上達し、私も毎回レッスンするのを楽しみにしていました。現在は、私の後を引き継いでくださった吉川久美子先生に習い、トレモロもスムーズになってきたとのこと。「いつかは『アランブラの思い出』を弾きます」とおっしゃるので、私は本当に感激しました。

私はギター教室を始めるにあたり、「音楽と縁のなかった方が、音楽のある生活を楽しめるようにお手伝いをしたい」と考えていました。プロ志望の若者や、将来有望な子供たちが習いに来てくれたらとてもいいけれど、生活に追われる主婦や、退職して時間のある人たちが、「何かやりたい」と思ったときに、それぞれのペースに合わせて、無理なく、そして飽きさせず、音楽の魅力(ひいてはギターの魅力)を伝えていくことも、大切にしたいと考えていたのです。ですから、こうして実際に一人の方が、それまで縁のなかったギターの世界に入り込み、しっかりとご自分のものにされていることが、本当に嬉しいのです。

日本を離れ、教える仕事も離れ、ギターをさわる時間もなかなか満足にとれない今、またギターを教える仕事に戻れるのか、私には自信がありませんでした。けれども、こうして私のもとから、ギターの世界へと足を踏み入れてくださった方がいたことを、私は誇りに思います。このことを忘れずに、いつかまたギター教師に戻れるよう、日々を大切に過ごしたいと思います。
[PR]
by yuko_kodama | 2010-04-18 11:24 | その他の話
<< 宮下祥子の新作「Gift」を聴いて バッハ「アレグロ」~その後 >>