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円楽師匠の逝去に思うこと

落語家の三遊亭円楽さんが亡くなったというニュースを、先ほどインターネットで見て知りました。
そのニュースには、長年親しいお付き合いがあったという桂歌丸さんの、マスコミに向けたコメントが添えられており、そのメッセージの中に以下のような文章がありました。

落語家は死ぬと芸まで持っていってしまいます。まだ圓楽さんから教えてもらいたいことが沢山あったのに。

ああ、本当にそうです。落語家に限らず、音楽家も俳優もダンサーも、舞台でその時その場限りの「生もの」を披露することを生業としている方なら、誰でも共感する言葉ではないでしょうか。

私にはこの言葉は、ひとつの大変残念な思い出を伴って、胸に響きました。ギタリストの故ホセ・ルイス・ゴンサレス氏のことです。
彼が頻繁に来日してコンサートを持っていた頃、私はまだギターを習い始めてもいませんでした。また、同門の方たちがスペインを訪れて彼の演奏に身近に接したりしていた頃は、彼の偉大さなど全く分からない初心者でした。そして数年後、私も少しはギターの勉強に真剣になり、先生や同門の先輩方のお話を聞くにつけ、ぜひ生演奏に接してみたいと思うようになりました。ところが、待ちに待った来日コンサートの直前に急逝されたのです。1998年4月のことでした。

今、私の手元にはホセ・ルイスのCDが何枚もあります。LPから復刻された若い頃の演奏から、亡くなる直前の録音に至るまで、どれも素晴らしい演奏で、特に最後の録音となったターレガの作品集は、聴いていると涙が出るほどです。けれども、私は彼の生の演奏を、とうとう聴く機会がありませんでした。何回録音を聴いても得られないものを、生演奏からは感じることができたでしょうに。

円楽さんの訃報と、それに寄せた歌丸さんのコメントから、こんなことを考えた1日でした。
by yuko_kodama | 2009-10-31 10:44 | その他の話
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