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円楽師匠の逝去に思うこと

落語家の三遊亭円楽さんが亡くなったというニュースを、先ほどインターネットで見て知りました。
そのニュースには、長年親しいお付き合いがあったという桂歌丸さんの、マスコミに向けたコメントが添えられており、そのメッセージの中に以下のような文章がありました。

落語家は死ぬと芸まで持っていってしまいます。まだ圓楽さんから教えてもらいたいことが沢山あったのに。

ああ、本当にそうです。落語家に限らず、音楽家も俳優もダンサーも、舞台でその時その場限りの「生もの」を披露することを生業としている方なら、誰でも共感する言葉ではないでしょうか。

私にはこの言葉は、ひとつの大変残念な思い出を伴って、胸に響きました。ギタリストの故ホセ・ルイス・ゴンサレス氏のことです。
彼が頻繁に来日してコンサートを持っていた頃、私はまだギターを習い始めてもいませんでした。また、同門の方たちがスペインを訪れて彼の演奏に身近に接したりしていた頃は、彼の偉大さなど全く分からない初心者でした。そして数年後、私も少しはギターの勉強に真剣になり、先生や同門の先輩方のお話を聞くにつけ、ぜひ生演奏に接してみたいと思うようになりました。ところが、待ちに待った来日コンサートの直前に急逝されたのです。1998年4月のことでした。

今、私の手元にはホセ・ルイスのCDが何枚もあります。LPから復刻された若い頃の演奏から、亡くなる直前の録音に至るまで、どれも素晴らしい演奏で、特に最後の録音となったターレガの作品集は、聴いていると涙が出るほどです。けれども、私は彼の生の演奏を、とうとう聴く機会がありませんでした。何回録音を聴いても得られないものを、生演奏からは感じることができたでしょうに。

円楽さんの訃報と、それに寄せた歌丸さんのコメントから、こんなことを考えた1日でした。
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by yuko_kodama | 2009-10-31 10:44 | その他の話

Bryant Park Fall Festival

ブライアントパークは、マンハッタンの42丁目5番街から6番街にかけて伸びる、芝生の敷かれた静かな公園です。威厳ある市立図書館の建物と、青々とした芝生が広がるその1ブロックは、背の高いビルばかりが立ち並ぶオフィス街の中で、まるでオアシスのように感じられます。この公園で行われた秋のフェスティバル(無料屋外コンサート)に行ってきました!

10月といえば、ニューヨークではコンサートシーズンの始まりです。カーネギーをはじめとする名高いホールの数々では、毎夜さまざまなコンサートがひらかれ、世界三大歌劇場のひとつといわれるメトロポリタン歌劇場でのオペラも始まりました。演奏家ばかりでなく聴衆も、世界中から集まっていることでしょう。
それらに足を運べない人間にも、せめて芸術の秋のおこぼれを・・・ということなのでしょうか。このブライアントパークのフェスティバルは、2週間にわたり平日は毎夜、クラシック、ジャズ、ダンスなど、さまざまな分野のアーティストが出演していて、舞台が設営されたテラスの座席以外でも、芝生でピクニックをしながら鑑賞することも可能です。だいぶ寒くなってきましたが、子連れでピクニックをしながら無料で音楽を楽しめるとあっては、行かない手はありません。私が出掛けたのは、9月29日、10月1日、7日の計3日間で、9月29日と10月7日は室内楽、10月1日はオペラのガラコンサートでした。

室内楽は、NY市内のブルックリン区にあるBargemusicというお店から、各日数組の室内楽グループが出演して、弦楽四重奏からピアノソロ、軽いジャズまで幅広い演奏内容でした。10月はじめとはいえ、日が落ちれば気温10度台前半まで冷え込むNYの秋。その寒さの中で素晴らしい演奏を披露するプロ根性には恐れ入ります。また、一般市民に公開された無料コンサートでありながら、ストラヴィンスキーやショスタコーヴィチなど、あまり大衆的とは思えないプログラミングも面白い。そして、そのショスタコーヴィチに、帰宅途中のサラリーマンや学生が足を止めて耳を傾ける姿が、いかにもここがNYであることを象徴しているようでした。

10月1日のオペラガラは、メトロポリタン歌劇場の若手育成プログラムに在籍中の歌手が4人出演していました。この日、マンハッタン名物ともいえる渋滞に巻き込まれ、かなり遅れて会場に到着した私は、残念ながら30分ほどしかコンサートを聴けなかったのですが、椿姫の「乾杯」やジャンニ・スキッキの「私のお父さん」といった、名曲中の名曲を聴くことができて嬉しかったです。この日も冬のような寒さの中、肩を出したドレスにショール1枚はおっただけの女性歌手たちのパフォーマンスに、すごいなぁ・・と思った私です。

ところで、このフェスティバルに出演していたのは、もちろん素晴らしいプロの演奏家たちですが、世界的に有名な方々ではありません。それでも私は、どんな有名な演奏家のCDを家で聴くより、たとえ無名の演奏家であっても生の演奏に接することを好みます。生の演奏には必ず、演奏家と聴衆との間にできる「空気」が存在するからです。この「空気」を演奏家と聴衆が共有することによって、「その場限り」の演奏が実現するというのが、生演奏の魅力だと思っています。CDで聴いたらなんてことないような曲が、生で聴くと素晴らしい迫力をもって心に響いてきたりするのは、この「空気」のためだと思います。
これは私個人の意見で、もちろん、素晴らしい演奏家のCDを家で聴くほうが良いという意見もあるでしょう。そして、それはそれで否定されるべき意見でもありません。要するに好みの問題です。

10月も終わりに近づき、NYの短い秋も終わりです。こうした屋外イベントも、来年の夏までおあずけ。でも、来夏はぜひ、セントラルパークで行われる夏の風物詩、NYフィルの野外コンサートを聴きに行きたいものです。
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by yuko_kodama | 2009-10-21 11:20 | クラシック音楽の話