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ロス・ロメロス コンサート

2009年3月21日(土)、ロメロ一家4人のコンサートへ行ってきました。

日本ではペペ・ロメロのソロコンサートに1度行ったことがあります。新宿オペラシティのコンサートホールだったと思いますが、広い会場いっぱいに豊かに響き渡る太く美しい音色が印象的でした。今回のコンサートは、ペペとセリン、セリーノ、リトの4人での、4重奏、2重奏、ソロを組み合わせたプログラム。ちなみに、ペペとセリンが兄弟、セリンの息子がセリーノ、リトはペペとセリンの兄弟であるアンヘルの息子です。セリン、アンヘル、ペぺの父であるセレドニオ・ロメロが始めた一家での合奏は、孫の代であるセリーノ、リトにまで継承されてきたわけで、まるでバッハ一家のように、音楽が家業として成立しているのはすごいことだと思います。

バッハ一家が音楽を家業としていても、傑出した超天才作曲家がヨハン・セバスチアン一人であったように、今回の4人の中でも傑出した演奏家はペペだけのようで、もちろん、それぞれに素晴らしい演奏家ではあるものの、天才というほどではなさそうだ、というのが私の正直な感想です。四重奏でも二重奏でも、常にペペの音色のみが華やかであり、他の3人は引き立て役という感じ。

しかし、これが音楽の面白いところで、だからといってコンサートがつまらなかったかといえば全く逆。1+1が2以上になる重奏、合奏の面白さを、彼らの力量差のおかげで、よりはっきりと実感できたわけです。

プログラムは四重奏でスタートし、続いてセリーノ・ロメロのソロでサンスの「スペイン組曲」。四重奏で、ペペの素晴らしい技巧と重厚かつ華やかな音色を見せつけられた後では、セリーノの音色はどこか貧弱でつまらなく感じられました。
次にセリーノとペペの二重奏で、ロドリーゴの「2台のギターのためのトナディーリャ」。この曲は初めて聴きましたが、1楽章は技巧的な現代曲、2楽章と3楽章は、古典的な雰囲気のメロディに現代的な和声を組み合わせた、いかにもロドリーゴらしい曲でした。二人の息はぴったりと合い、アポヤンドを多用してスケールを豪快に駆け抜けるペペに、一糸乱れぬ伴奏をつけるセリーノ。ソロ演奏では物足りなく感じた音色も、ペペの演奏を盛り立てて華を添えるには申し分ないと思われました。
次はリトのソロ演奏で、ペペ作曲の「サビーカスのファルーカ」。題名どおり、フラメンコ曲です。リトは4重奏では主にコード、リズムのパートを担当していて、時にはギターを叩くパーカッションなどもやっており、フラメンコ風のテクニックが持ち味なのだと思いました。
前半最後は、ヒメネスの「ルイス・アロンソの結婚式」という曲。言ってみればスペイン民謡メドレーのような曲で、どこかで聴いたことあるゾ!という、いかにもスペインぽいメロディが次々に出てきて、それを4人が代わるがわるラスゲアードを担当しながら華やかに演奏して盛り上げていくので、会場のお客さんも非常に盛り上がっているのがよく分かった1曲でした。

休憩をはさんだ後半、プログラムでは四重奏でビゼーの「カルメン組曲」となっていたので、これを楽しみにしていたのですが、残念ながら曲目変更。私の耳では舞台でペペの話す英語を聞き取れなかったのですが、どうやらペペの自作の曲に変更されたようでした。これもフラメンコ曲で、前半のリトのソロ演奏のあたりから、クラシックギターのコンサートというよりは、フラメンコショーのような雰囲気になったなぁ、と思っていたのですが、続いてのセリンのソロ演奏がヴィラ=ロボスの前奏曲だったので、少し客席も落ち着いてきました。セリンの演奏は、ペペのように華のあるものではありませんでしたが、しっとりした清潔な印象で、私には好感が持てました。
次はセリンとペぺの二重奏で、アルベニスの「グラナダ」。アレンジはペペだと思いますが、ピアノのオリジナルとは異なる調に移調されていました。編曲ものの移調には、やはりメリットとデメリットがあって、今回の場合、あまりにも慣れ親しんだ曲であることから、私はデメリットを強く感じました。もちろんギター演奏に無理のない調へ移したことで、音楽は美しく流れのあるものになり、ギターらしい特長も出しやすいのですが、グラナダの街が持っている静謐な雰囲気が失われていたように思います。この辺は、バッハの音楽を移調して演奏するのとはちょっと違って、「グラナダ」が、実際のグラナダの街をそっくり音楽にうつしとった、標題音楽の傑作であることが大きいと思います。
二重奏の後は、いよいよペペのソロ演奏で、彼のオハコであるタレガの「グラン・ホタ」。ホタは実際にはスペインの北部アラゴン地方の民族舞踊ですが、ペペの演奏は華やかで、ラスゲアードや早いスケールを散りばめて、どちらかといえばアンダルシア的。でも、タレガが意図したのはきっと、この曲が「ホタ」であるということよりも、どうしたらギターの魅力が多くの人に伝わるか、ということではないかと思ったとき、ペペの演奏こそ、それを体現していると思わせられます。そうしたギターの魅力がこの夜も観客にしっかりと伝わったのでしょう。この日初めてのスタンディング・オベーションとなりました。
盛り上がったところで、最後に再び四重奏。ペペの作曲で「カディスからハバナへ」。これもフラメンコ調の曲ですが、グラン・ホタですっかり盛り上がった会場の熱気を受け止めるには最高のプログラム。4人が次々と華やかなフラメンコスタイルのテクニックを繰り出して、演奏終了後には聴衆は総立ちで拍手。アンコールが3曲も続いたのでした。

ロメロ一家は、1957年にスペインからアメリカへ移住してきたとのこと。アメリカ人として暮らすからこそ、自分のルーツをしっかりと意識している。アメリカにいるからこそ、現代のスペインとは少し違った、古い時代のスペインを体現できる。彼らのコンサートを聴いて、そんなふうに感じました。
日本にいたら、4人でのコンサートは聴けなかったでしょう。なぜ日本にはペペしか来ないのかが分かったけれど、4人でのコンサートもまた素晴らしいものだったことは間違いありません。

THE ROMEROS
Celin,Pepe,Lito and Celino Romero
(92nd Street Y, Theresa L. Kaufmann Concert Hall, Saturday, March 21, 2009)
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by yuko_kodama | 2009-03-26 12:09 | ライブ、コンサートの話

お久しぶりです!!

ずっと更新が滞っていたこのブログですが、ぼちぼち再開していこうと考えています。更新を待っていてくださった方々、今まで申し訳ありませんでした。今後も頻繁には更新できないかと思いますが、どうぞ気長にお付き合いくださいませ。

さて、私にとって2008年は色々なことがあって、瞬く間に過ぎ去っていった感があります。
そして2009年。家族の都合により、ニューヨークへと引っ越してきました。横浜・川崎でのレッスンはすべて、吉川久美子先生が後任として引き継いでくださいました。お忙しい中、快く引き受けてくださった吉川先生には、心から感謝しています。教室生の皆さん、ぜひ吉川先生とこれからもギターライフを楽しんでいってくださいね。

これからはまた少しづつ、音楽について考えたこと、コンサートレポートなどをお届けしていけたらと思っています。ニューヨークならではの音楽シーンにも出会えたらいいなと思っています。それでは、これからも「お昼寝部屋」をよろしくお願いいたします。
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by yuko_kodama | 2009-03-25 01:09 | その他の話