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すべての凡庸なる者たちよ

もう1月も終わりですね。過ぎてしまいましたが、先日1月27日はモーツァルトの誕生日。250年前のこの日、一人の天才が生を享けました。生誕250年の記念にあたる今年は、新聞や雑誌などでも、この話題で持ちきりです。昨日30日の朝日新聞から、コラムを紹介します。

「すべての凡庸なる者たちよ、お前たちすべてを赦そう」 (サリエリ)

コラムでは、前半でモーツァルトの偉業を紹介したうえで、後半、ピーター・シェーファーの「アマデウス」を引いて、モーツァルトの天才に改めて思いをめぐらせます。後半部分を以下に引用しましょう。

英国の劇作家ピーター・シェーファー(1926~)は巧みな仕掛けでモーツァルト像をいまによみがえらせた。彼の「アマデウス」(79年初演)は舞台も映画も刺激的だった。
同時代の宮廷作曲家サリエリを主人公にしたのが成功の秘訣だろう。いわばネガからモーツァルトの輝きを浮き彫りにした。「すべてをあなたにささげた私ではなく、なぜあの下品な男をあなたは選んだのか」と神を呪うサリエリである。
サリエリの悲劇は、理解する人だったことだ。モーツァルトが「神の子」であり、彼の音楽が至高であることを痛いほどわかっていた。自分が二流であることも。決してモーツァルトにはなりえない人々の嫉妬と悲哀の代弁者を演じた。
「サリエリ。凡庸なる者たちの守護神!」と自嘲的なせりふを発し、自殺を図る。
息絶える前に観客席に向かって語りかけた。
「すべての凡庸なる者たちよ - 今いる者、そして生まれくる者も - お前たちすべてを赦そう。アーメン!」
27日がモーツァルト生誕250年だった。
美しいピアノ協奏曲を聴きながら思う。「いま、ここに」時空を超えて彼は生きつづけている。凡庸なる私たちは、いつまでも彼をたたえるべき言葉が見つからないまま聴きつづける。

(朝日新聞 06/1/30 「時の墓碑銘(エピタフ)」 小池民男 )

私は、この「アマデウス」を映画で見ました。サリエリに、ずいぶん感情移入した覚えがあります。
サリエリは当時の宮廷音楽家としてナンバー1の地位にあった人ですが、モーツァルトの出現によりその地位を失うのではないかという恐れを抱きました。モーツァルトの才能に嫉妬し、彼を殺そうとするほど憎みました。
けれども、モーツァルトの才能とその音楽の素晴らしさを誰よりも理解していたのもまたサリエリでした。モーツァルトの死に臨み、もうその至上の音楽が新しく生み出されることはないと悲しみにくれるのです。

サリエリだって、素晴らしい音楽家だったのでしょう。モーツァルトと比べるから、絶望してしまうのです。私も、日々様々なコンプレックスを持ちながら、それでも生徒からは「先生」と呼ばれてしまうし、お金を頂いて音楽を聴いていただく立場です。絶望せずに音楽をやっていくためには、多少目をつぶる必要もありそうです。

天才は天才、凡人は凡人。
それなりの立場で、それぞれの音楽を楽しむこと。
やはり音楽は楽しまなくちゃね、と思っています。
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by yuko_kodama | 2006-01-31 21:58 | メディア(番組・記事)紹介

富川勝智&児玉祐子 (バック・イン・タウンにて)

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1月26日(木)、曙橋のライブハウス「Back in Town」にて、富川勝智氏と、わたくし児玉祐子によるソロとデュオでのライブがありました。

当日はなかなかの盛況ぶりでした。前半はデュオで2曲、その後私のソロ演奏。後半は、富川氏のソロ演奏から始まり、最後に再びデュオを楽しんでいただきました。(プログラムは最後に掲載。)
私の依頼に、快く共演を引き受けてくださった富川氏。彼の魅力は、なんといっても銘器アルカンヘルから生み出される美しい音色と、繊細なニュアンスがしっかり伝わる表現力にあると思います。デュオでは、その音色、音量、表現力に負けじと、必死に練習をしました。互角に演奏できたかといえば疑問ですが、昨年4月のデュオ・コンサートの時よりは、少し釣り合う演奏が出来るようになってきたのではないかと、自分では思っています。また、以前よりも、二重奏での掛け合いの楽しさを、ステージでも味わうことが出来るようになってきました。リハーサルなどで確認しあってきたことは忘れて、ステージで新しく音楽と出会い、相手の呼吸に合わせながら、掛け合いを楽しみ、音楽をその場で作っていくような感じです。この感触は、聴衆にも伝わっていくのではないかと思います。
翻って、デュオのほうに重きをおいて練習してきた結果が、ソロ演奏にはしっかり出てしまいました。練習不足という自信のなさは、結果、緊張となってステージに表れます。こちらは、また日々の練習を積み重ねていくしかありません。またステージに立つ機会があれば、そのときこそ納得のいく演奏をしたいですね。

ご来場いただいた方々、本当にありがとうございました。
ぜひ感想などお寄せくださいませ。


♪Program
<duo>
・春の海 (宮城道雄)
・ソナタ (シャイトラー)
<solo> 児玉祐子
・ファンタジー (S.L.ヴァイス)
・愛のロマンス (「禁じられた遊び」のテーマ 作者不詳)
・スケルツィーノ・メヒカーノ (M.M.ポンセ)
・ハバネラ/ロートレック讃歌 (E. サインス・デ・ラ・マーサ)
・アラビア風奇想曲 (F.ターレガ)
<solo> 富川勝智
・ラグリマ (F.ターレガ)
・マリア・ルイサ (サグレラス)
・11月のある日 (L.ブローウェル)
・ショーロス1番 (E.ヴィラ=ロボス)
・カバティーナ (マイヤーズ)
・エストレジータ (M.M.ポンセ)
<duo>
・愛の挨拶 (E.エルガー)
・愛の夢 (F.リスト)
・主題と変奏 (J.ブラームス)
・幻想曲 Op54 bis (F.ソル)

(アンコール)
・雪の降る街を (中田善直)
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by yuko_kodama | 2006-01-30 00:31 | ライブ、コンサートの話

今年のラ・フォルネ・オ・ジャポン

昨年も何度かこのブログで紹介した、フランス直輸入の音楽祭“ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン”が、今年もゴールゲンウィークに開催されます。今年のテーマは「モーツァルトと仲間たち」。モーツァルト生誕250年を記念して、5月3日~6日までの4日間、国内外の一流アーティストの演奏が1500円~3000円程度の格安料金で楽しめます。今年は「0才からの」と題したコンサートも毎日開催。赤ちゃんがいてコンサートから足が遠のいている方も、ここでは遠慮なく生の音楽を満喫できそうです。 (詳細 → チケットぴあ

昨年初めて催されたこの音楽祭ですが、私も1日足を運んでみたところ大盛況の様子でした。こうして定着し、今年も開催されることを、心から歓迎しています。

昨日の「コンサートプログラム考」でも書きましたが、一般的にはクラシック音楽は難解で高尚なものといったイメージが根強く、慣れたファン以外はなかなかホールに足を運ばないと思います。しかし、昨年の同音楽祭では、従来のファン層以外の客層を取り込むことに成功しています。これは、気軽に聴ける料金設定や、通常はお断りの子供連れを解禁したことなど、色々な理由が重なってのことでしょう。ゴールデンウィークを利用して、昼から夜まで幅広い時間帯にコンサートが設定されているのも嬉しいことです。実際の会場でも、従来のコンサートにはない軽やかで明るい雰囲気が漂っていて、大変好感を持ちました。

昨年は出番のなかったギターも、今年は村治佳織さんの出演が予定されています。モーツァルトにちなんだソル「魔笛の主題による変奏曲」などのプログラム。腕の故障による休養から復帰されるのが楽しみですね。

クラシックを堅苦しく考えたり、なんとなく気後れしてコンサートホールに足を運べずにいた方。
興味はあるけどチャンスがない、と思っている方。
クラシックのチケットは高くて・・・という方。
この音楽祭は、コンサート鑑賞デビューにうってつけです。カジュアルに、楽しく、音楽会デビューを果たしてみましょう!
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by yuko_kodama | 2006-01-19 23:40 | クラシック音楽の話

コンサートプログラム考

私が現在教える生徒さんの大半は、ギター歴が半年から1、2年といった方々です。熱心な方も多く、私が関係する演奏会や、お奨めするコンサートなどにもよく足を運んでくださいます。そうした方と話している中で、「演奏会のプログラムには知っている曲がほとんどなく、とても難しい」という話が出ました。

演歌やポピュラー音楽は「大衆的」な感じがするが、クラシック音楽はちょっと「高尚」で敷居が高い。せめて「アルハンブラの想い出」や「禁じられた遊び」といった、耳慣れた曲が1曲くらい入っていれば、初めての人も聴きやすく、もっとファンも増えるのではないか。

これはその会話の一部ですが、ギターを始めて間もない頃、こうした思いを持った方は多かったと思います。演奏会に限らず、レッスンで弾く曲はなおさら、知らない曲ばかりです。けれどもレッスンが進むに従って、興味のある方は多くの演奏会へ出掛け、またはCDを買い求め、いつの間にか当たり前のように古典から現代までの多くの曲が聞き知った曲になっています。そして、こうしたギター学習者が聴衆のほとんど全てを占めているのが、ギターのコンサートの現状です。この状況を受けて、特に演奏家やその周辺関係者による自主企画のコンサートなどでは、「知られた曲」よりも「弾きたい曲」を弾いてしまうことが多いのかもしれません。昨年の自分の演奏会を振り返っても、考える余地はあるように思いました。

しかし、多くのコンサートでは、(集客のための)聴衆への配慮から、よく知られている曲をプログラムに入れることはむしろ一般的です。といっても、ピアニストが常に「エリーゼのために」をプログラミングするわけではないのと同様、ギタリストも常に「禁じられた遊び」ばかりを弾くわけではありません。タレガやソルの代表的な作品はもちろん、編曲ものではバッハやアルベニス、グラナドスなどが「よく知られた」曲の範疇に入るでしょう。

ということは結局、今までクラシック音楽と縁のなかった初級の学習者は、コンサートに行けば知らない曲ばかりになってしまうのかもしれません。演奏者側としては、客層によっては多少ポピュラー音楽を取り入れるなど、耳慣れた曲からクラシックの名曲へと誘導する工夫も必要なのかな、と思います。そして、「知らない曲が多い」という方には、「知らないからつまらない」ではなく、「知ったら面白いだろう」と考えて、色々な曲を積極的に聴いてもらいたいです。

とにかく最初は素直に旋律に耳を傾けて、頭で考えるのではなく、心で楽しんでほしい。クラシックだからといって、評論家のように構えて聴く必要など何もないのです。
そうして聴いていくうちに、「この曲はよく聴くな」という曲がたくさん出てきます。ギター作品はピアノなどに比べればその数は圧倒的に少なく、比較的早い段階で知っている曲が増えるでしょう。そうした中で、「アルハンブラ」や「禁じられた遊び」以外のお気に入りが見つかるかもしれません。何世紀もの時代を超えて残ってきた名曲は、やはり美しいものです。コンサートやCDにかける資金がなければ、図書館で探してみてもいいのです。「クラシック」に慣れるのであれば、ギターだけでなく、ほかの楽器やオーケストラの有名な曲などを聴くのもよいでしょう。
それでも「面白くない」と感じたら、クラシック音楽が好きではないのかもしれません。それは「クラシックが難しいから」ではなく嗜好の問題で、どうしても演歌が嫌い、という人がいるのと同じです。

「クラシックは難しい」という。「難しい」という言葉は、理解しようと思うところから出るのかもしれません。でも、音楽を聴く行為は「考えて理解するもの」ではなく、まずは「心で感じるもの」ではないでしょうか。心の中に壁をつくらず、先入観なしに音楽を楽しんでもらいたいと思っています。

もちろん、私自身は「心で感じてもらう」演奏を目指して、今年も勉強を続けたいと思います。どんな名曲も演奏家の演奏ひとつで、面白くもつまらなくもなることを肝にめいじて。
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by yuko_kodama | 2006-01-18 20:49 | クラシック音楽の話

ブラームスとクララ・シューマン

1月14日付け朝日新聞 be版(土曜版)に、ブラームスとクララ・シューマンについての記事が掲載されました。

土曜be版の1・2面は「愛の旅人」と題したシリーズで、実在・架空を問わず様々な人物の恋愛を、その舞台となった土地の風景とからめて紹介するコーナー。今回は、バーデンバーデンやリューベックといったドイツの町を舞台に、ブラームスとクララ・シューマンの関係を中心としつつ、代表作である「交響曲第1番」について触れています。ちなみに、クララ・シューマンはロマン派を代表する作曲家ロベルト・シューマンの妻であり、優れたピアニストでもあった女性です。

若きブラームスは、クララの夫のロベルト・シューマンをドイツ・デュッセルドルフに訪ねて自作を演奏し、夫妻を感嘆させる。シューマンが音楽雑誌で絶賛し、ブラームスは世に出た。・・・・金髪に青い目の端正な顔立ちをしたブラームスは、美しく才能あるピアニストのクララに恋する。クララの思いは手紙が破棄されていてよくわからない。2年後、シューマン亡き後も、ふたりは結婚しなかった。 (記事より抜粋)

記事によれば、ふたりは他にもそれぞれに色恋ざたがあったものの、音楽をとおして確固たる信頼で結ばれ、緊密な関係を築いていたとのこと。お互いの才能にも、惹かれあうところがあったのでしょう。ブラームスの名曲の数々に見られる重厚な美しさは、常にクララに支えられたものでした。

さて、私も今月はブラームスに取り組んでいます。1月26日(木)バック・イン・タウンでのライブにて、富川勝智氏とジョン・ウィリアムス編「主題と変奏」を演奏する予定です。
この「主題と変奏」は、もともとは弦楽六重奏曲第1番(Op18)の第2楽章ですが、映画音楽としても使われた有名な旋律であり、独立して演奏される機会も多い曲です。ブラームスは、この楽章を「主題と変奏」と題して、自身の手でピアノ版に編曲しており、これはクララ・シューマンに捧げられています。
重々しく始まった短調の美しい主題は、激しい変奏を経て穏やかな長調へと展開され、緊張感を保ちつつ再び主題が提示されたところで、静かに幕を下ろします。ギター二重奏版では、それぞれのパートがヴァイオリン・ヴィオラ・チェロを一台づつ担当するような感じで、原曲をそのまま生かしながらもギターの魅力が存分に味わえます。技術的にもそうとう難しい曲ですが、さすがジョン・ウィリアムスだけあり、名編曲と断言できるでしょう。手ごわい難曲ですが、頑張って練習しています。どのように仕上がるか、弾き手としては怖くもあり、でもやはり楽しみでもあります。
ぜひライブにもお越しください。(結局は宣伝?)
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by yuko_kodama | 2006-01-14 18:23 | メディア(番組・記事)紹介

あけましておめでとうございます

少し遅い新年のご挨拶となりました。
今年も、少しづつではありますが、ギターという枠にとらわれない「音楽」の話題を書いていけたらと思っております。どうぞ宜しくお願い致します。

大晦日は「ジルベスター・コンサート」を楽しみましたが、年が明ければ「ニューイヤー・コンサート」。こちらは、NHKが毎年ウィーン・フィルのコンサートを放送しています。d0030554_939033.jpg

ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートは、毎年ウィーンの学友協会ホールから衛星生中継で世界各国に配信されています。日本ではNHKが、例年ならばBSでコンサート第一部の最初から、地上波では教育チャンネルで第二部を放送していました。ところが、今年はなんと地上波、しかも総合チャンネルで第一部の最初からを生中継!ゴールデンタイムにクラシックコンサートがメジャーチャンネルで放送されるというのは、普通あまりないことだと思いますが、ある程度視聴率のアテがあるのでしょうか?d0030554_9192636.jpgそういえば、昨年はクラシックの名曲を集めた「ベスト・クラシック100」というCDや、クラシック音楽の世界を描いた漫画「のだめカンタービレ」も大ヒット。クラシック音楽界には、少し追い風が吹いているのかもしれません。d0030554_9194564.jpg

話は戻って、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートはいつもどおり軽やかなウィンナ・ワルツやポルカがプログラムの中心。以前に一度だけ、来日中のウィーン・フィルの公開リハーサルを見学したことがありますが(本公演のチケットは高くて手が出ない・・・)、ウィーン・フィルの弦の音は、素晴らしく柔らかくて、優しく軽やか。日本のオケでは聴いたことのない音色で、うっとりするような美しさでした。テレビでは魅力半減ですが、それでもやはり音が違うのは分かりますね。今年は、モーツァルト生誕250年にあたるため、例外的に「フィガロの結婚」序曲なども演奏されました。

モーツァルト・イヤーということですが、今年はシューマン没後150年、ショスタコーヴィチ生誕100年など、記念年が重なっています。自然と、西洋クラシック音楽の連綿と続く歴史や、偉大な音楽家たちの層の厚さに思いがいたります。こうした大作曲家には、ギター作品(または有名な編曲作品)は少ないのですが、ギター音楽もこうした流れと無縁であるはずはありません。「ギター」と他のクラシック音楽を切り離すことなく、色々な音楽に目を向け、考えていきたいと思っています。

話題が色々なことに及んでしまいました。
今年は、どんな1年になるでしょうか。個人的にはレッスンも演奏も、バランスよく力を入れて頑張りたいと思います。新しいレパートリーの習得にも貪欲になりたい。ブログでは、クラシック音楽とギター音楽をつなぐような話題を提供できたらいいな、と考えています。

本年もどうぞ宜しくお願い致します。
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by yuko_kodama | 2006-01-06 09:33 | クラシック音楽の話