カテゴリ:クラシック音楽の話( 26 )

うたのおねえさん

毎朝、2才の次女とNHK Eテレの「おかあさんといっしょ」を見るのが日課です。

昨年4月に交代した新しい「うたのおねえさん」(あつこおねえさん)も、まもなく交代から1年。だいぶ歌の感じが変わってきました。

交代当初は歌声が透明なあまり、おにいさんの声と重なると聞こえなかったり、ひょうきんな歌では物足りなかったりしたのですが、最近は地声の混ぜ方(というのかな?)にも慣れたようで、聞こえないこともなくなりました。それと同時に、「音大出身の声楽家」という感じの歌い方が薄れてしまって残念だな、と思う部分もあります。

昨年9月の「ブーケ・デ・ボンボン」のコンサートでソプラノお二人とご一緒させて頂いて以来、色々なシーンでこれまでよりも歌に対する興味が深まっています。
私にとって、あつこおねえさんの醍醐味はやはり専門的な勉強を積んだ声楽家ならではの圧倒的な声量です。「おにのパンツ」で披露してくれたようなオペラ歌手のような発声を生かせる歌がまた聞きたいなあと思いながら、毎朝見ています。





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by yuko_kodama | 2017-01-18 13:09 | クラシック音楽の話

初めての世界

本日、「ブーケ・デ・ボンボン」の全体リハーサルに行って参りました。

初めてお会いするピアニストの山内さん、ソプラノの高嶋さんと村岡さん。皆さん素敵な方々でいらっしゃいました。そして、何よりも他楽器や声楽とのアンサンブルが大変新鮮でした。特に声楽の方とは今まで全く接点がなかった上に、コンサートなどもあまり聴く機会がありませんでしたので、私にとっては初めての世界。

今回よく分かったのは、「歌うように演奏する」ことと「歌う」ことが、似て非なる、全くの別物であったということです。本当に歌を理解して自分でも歌えるようになれば、両者を限りなく近づけることは可能だと思います、もちろん。でも、やはり同じにはならないのではないかな。

歌や吹奏楽器は、息を吸わないと音が出ない。当たり前ですが、私にとってはこれを意識するのが本当に難しかったです。間を取って深く息を吸い込むブレスもあれば、フレーズが切れないようにこっそりと「盗む」ブレスもあります。そのあたり、尾野さんや山内さんは素晴らしく慣れていらして、大変勉強になりました。

この感覚を忘れないうちに練習練習!!








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by yuko_kodama | 2016-08-30 21:24 | クラシック音楽の話

題名のない音楽会

10日(日)放送の「題名のない音楽会」をたまたま見ることができました。この日は「クラシック新世紀の音楽会」と題して葉加瀬太郎さんをゲストに迎え、司会の五嶋龍くん(つい「くん」付けで呼んでしまいたくなる龍さん、もう立派な大人です。)と素晴らしいヴァイオリンの競演。
なかでも、エンディングに演奏された葉加瀬氏の代表作である「情熱大陸」のセッションは、テレビ放送であることを忘れるくらいにリアルな演奏の楽しさが伝わるものでした。あの時間、演奏していた二人が誰よりも音楽を楽しんでいたことは明らか。ああいう演奏を聴けると、本当に気分がハッピーになります。

終演後に
「あ〜〜楽しかった!!」
と心から思える演奏は、アンサンブルの醍醐味。ソロ演奏では、なかなかこの楽しさは味わえません。なぜか?「楽しい」という気持ちは人同士が作用し合うことで生まれるからだと思います。この楽しさを、ぜひ多くの人に体験経験してもらいたい。今年はまた、横浜教室でもアンサンブルのレッスンを再開していきたいと思います。

ちなみに、ソロ演奏がうまくいった時は「あ〜〜気持ち良かった!!」
ですね。

題名のない音楽会 1月10日放送
「クラシック新世紀の音楽会」
http://www.tv-asahi.co.jp/daimei_2015/sphone/broadcast/0013/

















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by yuko_kodama | 2016-01-12 16:08 | クラシック音楽の話

野望達成!

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今週月曜日の横浜レッスンです。先日来抱いていた野望、とうとうレッスン室のピアノを全開にして弾いてみました。
すごい!響きが全然違いますね!感動しました。

こうして時々こっそり練習しているピアノですが、弾いているのは高橋はゆみ作詞作曲の「ね」という合唱曲の伴奏です。
http://youtu.be/ThR5u8K5q0g

これを卒園する子ども達と歌うのかと思うと、ちょっとほろりと泣けてくる、とても優しい雰囲気の歌です。

この優しくて甘い雰囲気は、「変ホ長調」という調性の特徴です。有名なところでは、ソチオリンピックで浅田真央選手が滑った(そして残念ながら大失敗に終わった)ショートプログラム曲、ショパン作曲の「ノクターン 作品9-2」なんかもあります。
http://youtu.be/jK-Mu1PV6uU

変ホ長調は、フラットが3つ。ミのフラットから始まる音階です。残念ながら、ギターで弾くにはとても難しい調性のため、ほとんど弾く機会はありません。
時々ピアノを弾くと、こういう色々な調性に触れることができ、気分が変わります。こうした調性の特徴を、ギターを弾いていると忘れがちだということにも気付かされます。

同じ音階でも、調性が変わると雰囲気も変わります。そんなお話も、レッスンの中で少しづつお伝えできたらと思いました。









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by yuko_kodama | 2015-02-18 09:54 | クラシック音楽の話

オペラ二題

夏に、メトロポリタン歌劇場(通称Met Opera)の歌手による屋外リサイタルの記事をアップしましたが、やはり、住んでいるからにはぜひとも劇場でのオペラ公演を見てみたいと願っておりました。今シーズン、念願かないまして、昨年秋と今年2月、2回の公演を見ることが出来ました!!

昨年秋は、近所に住むお友達のお誘いを受けて、平日の夜公演を鑑賞。オーケストラ(1階席)の後方の座席でしたが、劇場のつくりのせいなのか、ステージが遠いという感じはまったくなく、迫力ある舞台を楽しむことができました。演目は「ホフマン物語」(オッフェンバック)。
3幕目の有名なデュエット「舟歌」以外は、まったく知らない演目でしたが、事前にあらすじや見どころ(聴きどころ)を調べて頭に入れ、当日は座席前に表示される字幕を頼りに鑑賞。オペラ初心者の私でしたが、とても楽しく鑑賞することができました。タイトルロールはテノールのジュゼッぺ・フィリアノーティ。私は歌手に詳しくないので比較・批評はできませんが、とても美しい声でした。純粋で繊細な、そしてどこか退廃的な詩人の雰囲気がよく感じられる歌だったと思います。素晴らしい歌を聴くと、「すべての楽器の究極の目的は、人間の歌を模倣することですよ」とレッスンで仰っていたギタリスト、ハビエル・ガルシア・モレーノの言葉を思い出します。楽器という媒体を通さない、それだけのことですが、直接的な感情表現という面において、やはり人間の歌を超えるものはないように私も思います。(ただし、人間には出来ないことを可能にするのもまた、楽器なのですが。)
舞台装置や衣装は、どれも物語が分かりやすく、素敵なものでした。特に、第二幕で、二枚の垂れ幕を用いただけで冬枯れの景色を演出していたのが、とてもモダンで美しかったです。三幕のヴェネチアの娼館の場面では、かなりエロチックな衣装のバレエダンサーが出てきてびっくりしましたが(笑)。
とにかく、たとえ音楽や物語を知らなくても、オペラってこんなに楽しめるんだ!!と実感した、私のMet Opera 鑑賞デビューでした。

2回目はつい先週、2月21日の夜公演。この日、アメリカは祝日です。お天気が良くないので、特別何もすることがないね・・・なんて話しながら、テキトウにインターネットを見ていたところ、なんとこの日のMet Operaはプラシド・ドミンゴが出演している!!ということで、急遽チケットを買い求め、一人で観て来ました。演目は「タウリスのイフィゲニア」(グルック)。はて、そんなオペラの演目あったかしら??というような演目でしたが、とにかくドミンゴに会いたい(もちろん客席から聴くだけ)一心だったわけです。
正直に結論からいうと、これはオペラ初心者にはかなり難しい演目でした。とにかく、知っているメロディーもアリアも全然ない。ストーリーはギリシア神話を下敷きにしたもので、ベースとなるトロイ戦争の神話から調べないと、オペラのあらすじだけ調べても片手落ちらしい。そのうえ、全4幕をとおして、舞台はひたすら神殿と隣接する牢屋(?)のみで、場面転換はゼロ。目にも耳にも、ちょっとした忍耐が必要な感じでした。
でもでも、やはりドミンゴは素晴らしかった!!ついでに言うと、ドミンゴが演じたオレステの親友であるピラード役を演じたポール・グローヴズも素晴らしかった。2人は同じテノールですが、声は全然違った印象で、それはもしかしたら年齢の違いから来るものなのかもしれませんが、ドミンゴの深くて陰影にとんだ、そして情感豊かな声と、グローヴズの柔らかく気持ちの良い声が好対照でした。2人が「お前のためならオレが死ぬ!!」と歌いあう4幕の場面はとても感動的でした。
この日の座席は、4階のバルコニー2列目。最上階なので、ものすごい高さから舞台を見下ろしている感じで、高所が苦手な私は客席についてしばらくは心拍がかなり上がっていたと思います(笑)。しかし、会場が暗くなり舞台のカーテンが開くと、アラ不思議。舞台を見下ろしているという感じがあまりないのです。座席の料金としては、オーケストラの最後方と同じくらいの料金なので、悪い席ではないと分かっていたのですが、あの高さでこれほどの臨場感を得られるというのは驚きでした。ドミンゴ氏、御年70才。とにかく現役で歌っているうちに生で聴けたことが、幸せでした。

オペラ、もう何回か行けたらいいな~。
とりあえず、リンカーンセンター(Metオペラハウスを含む、複合音楽施設)のバックステージツアーがあるようなので、いつか参加してみたいと思っています。
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by yuko_kodama | 2011-03-01 13:48 | クラシック音楽の話

ミュージカル「ウェストサイドストーリー」

ミュージカル「ウェストサイドストーリー」を観てきました。

この有名なミュージカルは、1957年に舞台で初演され、その後1961年に映画化されました(ウィキペディアより)。今回私が観た舞台は、今年3月からブロードウェイでリバイバル上演されて好評を博しており、以前から観にいきたいと思っていました。

「ウェストサイドストーリー」は、現代版「ロミオとジュリエット」と言われます。“ストーリーありき”で作られているせいか、もしこれが小説だったら全く面白くないのでは?と思ってしまう所もあります。あまりに唐突で不自然な一目惚れや、くだらない喧嘩、あっけなく何人もが死んでしまう結末・・・。それでも、今回の舞台を観て、私は涙がボロボロこぼれるほど感動してしまいました。これは、超一流の音楽と歌、ダンスのお陰に他なりません。

最も有名なバルコニーのシーンで歌われる「Tonight」。
主役のマリアは「家族が呼んでいる。不審に思われるから、もう帰って。」という割には、恋人トニーと一緒に長々と愛を歌い合うわけで、(家族にバレバレでしょ?)と突っ込みたくなるけれど、その後に訪れる悲劇を知っているので、この美しい歌に感動して涙ぐんでしまう。マリア役のホセフィーナ・スカリオーネは、プロフィールを見ると、オペラ歌手としての研鑽を積んでいるようで、マイクが必要ないのではと思われるほどの素晴らしい声量と歌声でした。

他にも、結婚式の真似事をするシーンで歌われる「One hand, One heart」、悲劇的な状況から現実逃避して歌う「Somewhere」、 兄を殺してしまった恋人を、それでも愛していると歌う「I have a love」など、美しいメロディの数々に、とにかく涙、涙。音楽の力は偉大です。

ダンスシーンも素晴らしかった!
冒頭の「プロローグ」。よくポスターなどにも使われる有名なダンスシーンですが、実際に見ると、ひとつひとつの動きの美しさがよく分かります。ジェッツ団(アメリカ人少年グループ)のダンスでは、ジャンプが、まるで糸でつられているかのように軽くて高いのが印象的でした。対するシャーク団(プエルトリコ移民の少年グループ)は、シャープでキレのある踊りがカッコいい!!

体育館でのダンスパーティのシーン。
ジェッツ団のリーダー「リフ」と恋人「ヴェルマ」、シャーク団のリーダー「ベルナルド」とその恋人「アニータ」の二組のカップルが踊り比べをするシーンは圧巻で、あまりにそのダンスが素晴らしいために、同じシーンで演じられたと思われる主役のトニーとマリアの一目惚れの演技が全く記憶にありません。

私の座席は、2階席の前から3列目という素晴らしい席でした。舞台両脇のバルコニーでパーカッションの演奏をしていたのですが、それがとてもよく見えて、これまた面白かったです。劇の性格上、ラテン音楽の要素が多く入っていて、パーカッションの二人は大活躍でした。オーケストラピットの指揮者もよく見えました。指揮者はピット内に立っていますが、手だけが舞台上からも見えるようになっており、舞台の役者さんとピット内のオーケストラの両方に指示を出すのです。とても面白いです。生のオーケストラと歌ですから、きっと1日として同じ演奏になることはないのでしょう。

ちなみに、今回のリバイバル上演では、初演時よりも大幅にスペイン語の台詞が増やされています。プエルトリコからの移民という設定に近づけるための演出とのことですが、ワンシーン丸ごとスペイン語、という箇所もあり、スペイン語が分からない人には大変です。でも、これは近年ヒスパニック系の住民が激増しているアメリカで、スペイン語が第二公用語ともいうべき地位を確立しつつあることも背景にありそうです。私は、忘れかけたとはいえ、まだ英語よりもスペイン語のほうが聞き取りがラクなので、これには助けられました。

ブロードウェイには本当にたくさんの劇場があって、たくさんの演目が毎日、日によっては1日に2回も上演されています。そのひとつひとつの劇場の中で、これだけの感動が日々生み出されているのかと思うと、気が遠くなりそうです。すごい場所です、ブロードウェイ。
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by yuko_kodama | 2009-12-15 12:41 | クラシック音楽の話

Bryant Park Fall Festival

ブライアントパークは、マンハッタンの42丁目5番街から6番街にかけて伸びる、芝生の敷かれた静かな公園です。威厳ある市立図書館の建物と、青々とした芝生が広がるその1ブロックは、背の高いビルばかりが立ち並ぶオフィス街の中で、まるでオアシスのように感じられます。この公園で行われた秋のフェスティバル(無料屋外コンサート)に行ってきました!

10月といえば、ニューヨークではコンサートシーズンの始まりです。カーネギーをはじめとする名高いホールの数々では、毎夜さまざまなコンサートがひらかれ、世界三大歌劇場のひとつといわれるメトロポリタン歌劇場でのオペラも始まりました。演奏家ばかりでなく聴衆も、世界中から集まっていることでしょう。
それらに足を運べない人間にも、せめて芸術の秋のおこぼれを・・・ということなのでしょうか。このブライアントパークのフェスティバルは、2週間にわたり平日は毎夜、クラシック、ジャズ、ダンスなど、さまざまな分野のアーティストが出演していて、舞台が設営されたテラスの座席以外でも、芝生でピクニックをしながら鑑賞することも可能です。だいぶ寒くなってきましたが、子連れでピクニックをしながら無料で音楽を楽しめるとあっては、行かない手はありません。私が出掛けたのは、9月29日、10月1日、7日の計3日間で、9月29日と10月7日は室内楽、10月1日はオペラのガラコンサートでした。

室内楽は、NY市内のブルックリン区にあるBargemusicというお店から、各日数組の室内楽グループが出演して、弦楽四重奏からピアノソロ、軽いジャズまで幅広い演奏内容でした。10月はじめとはいえ、日が落ちれば気温10度台前半まで冷え込むNYの秋。その寒さの中で素晴らしい演奏を披露するプロ根性には恐れ入ります。また、一般市民に公開された無料コンサートでありながら、ストラヴィンスキーやショスタコーヴィチなど、あまり大衆的とは思えないプログラミングも面白い。そして、そのショスタコーヴィチに、帰宅途中のサラリーマンや学生が足を止めて耳を傾ける姿が、いかにもここがNYであることを象徴しているようでした。

10月1日のオペラガラは、メトロポリタン歌劇場の若手育成プログラムに在籍中の歌手が4人出演していました。この日、マンハッタン名物ともいえる渋滞に巻き込まれ、かなり遅れて会場に到着した私は、残念ながら30分ほどしかコンサートを聴けなかったのですが、椿姫の「乾杯」やジャンニ・スキッキの「私のお父さん」といった、名曲中の名曲を聴くことができて嬉しかったです。この日も冬のような寒さの中、肩を出したドレスにショール1枚はおっただけの女性歌手たちのパフォーマンスに、すごいなぁ・・と思った私です。

ところで、このフェスティバルに出演していたのは、もちろん素晴らしいプロの演奏家たちですが、世界的に有名な方々ではありません。それでも私は、どんな有名な演奏家のCDを家で聴くより、たとえ無名の演奏家であっても生の演奏に接することを好みます。生の演奏には必ず、演奏家と聴衆との間にできる「空気」が存在するからです。この「空気」を演奏家と聴衆が共有することによって、「その場限り」の演奏が実現するというのが、生演奏の魅力だと思っています。CDで聴いたらなんてことないような曲が、生で聴くと素晴らしい迫力をもって心に響いてきたりするのは、この「空気」のためだと思います。
これは私個人の意見で、もちろん、素晴らしい演奏家のCDを家で聴くほうが良いという意見もあるでしょう。そして、それはそれで否定されるべき意見でもありません。要するに好みの問題です。

10月も終わりに近づき、NYの短い秋も終わりです。こうした屋外イベントも、来年の夏までおあずけ。でも、来夏はぜひ、セントラルパークで行われる夏の風物詩、NYフィルの野外コンサートを聴きに行きたいものです。
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by yuko_kodama | 2009-10-21 11:20 | クラシック音楽の話

熱狂の日~コンサート

遅ればせながら、私が行った「熱狂の日」音楽祭のコンサートのレポートです。

私が出かけたのは、5月4日19:45開演という、遅い時間のコンサート。演目は、バルトークの「2台のピアノと打楽器のためのソナタ Sz.110」と、ストラヴィンスキーのバレエ音楽 「結婚」の2曲です。バルトークのほうは曲を知っており、この珍しい編成の曲をぜひ生演奏で、と思ったことから、このコンサートを選びました。ストラヴィンスキーの「結婚」は初めて出会った曲ですが、4台ピアノと打楽器、合唱、4人の独唱という編成でした。

1曲目のバルトーク。曲は知っていたものの、CDで聴くのとは迫力が違います。舞台には2台のピアノが向かい合わせに置かれ、奏者がお互いの目を見ながら呼吸を合わせている様子が、大ホールの2階席まではっきりと伝わってきます。打楽器は、ピアノの後方、舞台中央に置かれ、二人の打楽器奏者が手を伸ばしあって、その時々に必要とされる打楽器をテンポよく分担していく様子が、視覚的にとても面白い。(打楽器というのは、視覚的に最も面白い楽器のひとつだと、私は常々思っています。)頭を空っぽにして、「見て」「感じて」楽しむことが出来た1曲でした。
2曲目を演奏するに当たり、舞台上では新たにセッティングが行われました。舞台隅に置かれていた2台のピアノが加わり、合計4台のピアノが、奏者の顔を客席側に向ける形で舞台中央に並べられました。ピアノの両側には打楽器が配置され、後方に合唱団がスタンバイ。ピアノの前方にソプラノからバスまでの4人の歌手が並び、指揮者が登場。配置も、作曲語法上も、ピアノ4台がオーケストラの代わりに用いられているようです。
曲は、ロシアの農民の結婚式の様子を音楽化したもので、独唱者はそれぞれ、花嫁とその母親、花婿とその父親。合唱団が付き添いや友人などのパートを歌っています。音楽はストラヴィンスキー一流の複雑さですが、この分かりやすいパート構成により、難しさを感じずに楽しめました。それにしても、ピアノ4台というから、どんなに派手になるかと思いきや、意外にピアノの音というのは目立たないもので、驚きました。当然ですが、主役は終始人間の声であり、打楽器の音は華やかですが、ピアノはでしゃばった感じが一切なく、ひたすら陰の盛り上げ役といった印象です。初めての曲でしたが、とても面白く聴きました。
余談ですが、この日、合唱団はなんとTシャツでの登場でした。来日の際の飛行機便で荷物が届かないアクシデントがあったとのこと。晴れの舞台のための衣装が手元にないなんて、本当に不本意だったことでしょう。けれども、開演前のお詫びのアナウンスに客席は、「そんなこと気にしないよ」という温かい拍手で応じ、それに勇気づけられたように、合唱団も素晴らしい演奏を披露してくれました。

無料で配られるプログラムには、この「結婚」の歌詞の日本語訳がきちんと載せられていました。チケット代も安い上に、こうしたサービスも充実しているのですから、演奏者はギャラの面でものすごく協力をしてくださっているのでしょう。一流の演奏家のこうした気概と、素晴らしいプロデューサーの力で、このイベントも毎年成長しているのですね。開始3年で、すでにGWのイベントとして定着した感のある「熱狂の日」音楽祭。また来年が楽しみです。

公式HPはこちら。→http://www.t-i-forum.co.jp/lfj/
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by yuko_kodama | 2007-05-18 18:13 | クラシック音楽の話

「熱狂の日」~マスタークラス

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン~「熱狂の日」音楽祭から、マスタークラスの聴講をレポートします。
この音楽祭では、毎年、世界中から集まった出演者によるマスタークラスが開かれており、有料公演のチケットを提示すれば、魅力的なマスタークラスを無料で聴講することができるのです。専門家や学生だけでなく、多くの一般の音楽ファンも楽しみにしている企画です。今年は、5月4日に、ギタリスト鈴木大介氏によるマスタークラスが予定されていたため、どうせならと、この日に出かけてみることにしました。

ギターのクラスは、朝一番の10時半開始。人出が多いことも予想して開場時間より20分ほど早く到着しましたが、予想に反して、並んでいる人はほぼ皆無。時間が早いせいか出足はイマイチのようです。レッスンを受けるのは、斉藤優貴くん。小学生で、もちろん全受講生中の最年少です。受講曲は、ヴィラ=ロボスの「練習曲第11番」とポンセのメキシコ民謡組曲から「わが心、君ゆえに」の2曲。子供とはいえ、コンクールにも出場を重ねている腕前なので、メカニックも音楽性も大人顔負けです。それでも、作曲家の出身や曲の背景への理解が不足しているとみた大介氏は、ヴィラ=ロボスの曲については、ブラジルについての説明や、その国民性から来ると思われる激しい抑揚が特徴であることなどを分かりやすく説明。また、ポンセの曲については、その表現の核となる恋愛感情について小学生相手に熱弁をふるい、大介氏本人も受講生も、時には会場からも笑い声のあがる楽しさ。最後は、少し余った時間を利用して、斉藤くんがブローウェルの黒いデカメロンから「恋する乙女のハープ」を演奏してくれました。素晴らしい演奏にギター界の可能性を感じさせる、さわやかなマスタークラスとなりました。

ギターのレッスンが終わり、一旦レッスン会場を退室(レッスン聴講は完全入替制です)。少し外を散歩してまわってから戻り、次のピアノのクラスも聴講。受講生は芸大の大学院生の男性です。フランスから毎年参加しているピアニスト、アンヌ・ケフェレック氏に、ドビュッシーの「喜びの島」を受講しました。ケフェレック氏のマスタークラスは一昨年も聴講しましたが、オーケストラの楽器の音色を引き合いに出して、色彩豊かに指導してゆくレッスンは、とても興味深いものでした。というわけで、今回も興味津々。
レッスンはまずケフェレック氏の挨拶で始まりました。「喜びの島」が作曲されたいきさつについて簡単に触れ、「皆さんも一緒に、この喜びの島へ向けて船出をいたしましょう。」という洒落たご挨拶です。しかし、この挨拶の「船出」という一言によって、私には明確に海のイメージが喚起され、続いて演奏された楽曲が波のリズムを模していることが伝わってきたのですから、さすが先生!です。このように、ケフェレック氏は、受講生にも明確で具体的なイメージを伝えながら、曲の表現について丁寧に指導していきます。さらに、題名の「喜び」というフランス語のニュアンスについても細かく解説。原語にあたることで得られる微妙なニュアンスも、曲を表現するには欠かせないことだと感じました。レッスンは、印象派の曲の表現についての普遍的な示唆を多く含み、私のような他楽器の演奏者にとっても、また鑑賞専門の愛好家にとっても、非常に有意義な時間であったと思います。退室時に振り返ると、通路まで立ち見の聴講生でいっぱいでした。

ここで私は昼食休憩。お腹を満たし、付近を散歩し、会場内で様々なグッズを販売するお土産店をまわったり、広場の屋台をひやかしたり・・・。どこも音楽で溢れ、ファンにはたまらない空間になっているのです。

夕方、再びレッスン会場へ。ピアノのクレール・デゼール氏のクラスは、すでに関連イベントのステージでの演奏などもしていらっしゃるプロピアニストの小柄な女性が受講者です。フォーレの「ノクターン」と、ラベルの組曲「クープランの墓に捧げる」より抜粋での演奏。立派なコンサートを聴くような演奏に会場はうっとりです。そのセンスの良い選曲には、デゼール氏も賛辞を送っていました。レッスンは色彩感を増すことを目的に進められ、やはり、各所でオーケストラの音色を引き合いに出しての表現を求められていました。ギターでも、色彩感溢れる演奏というのは、一台のギターから様々な楽器の音色が聞こえてくるように感じるものですね。どんな楽器でも、表現者に求められるものは普遍です。
ピアノのレッスンでは、ピアノを習っていると思われる小さな子供たちも会場に多くいました。目を輝かせ、身を乗り出して演奏を聴いていた子供たちですが、通訳を介しての専門的なレッスンはさすがに難解だったようで、途中退席も目立ちました。子供関連のイベントは多数ありましたが、多くは音楽初心者の子供向けのイベントです。すでに楽器の勉強を始めている子供に向けた、専門的かつ理解しやすいイベントが計画されても良いのでは、と感じました。

この日最後のクラスは、予定されていたヴァイオリンのレッスンではなく、急遽チェロのレッスンになっていました。(手元に変更後の資料が残っていないので、講師名が分からず、申し訳ありません。)受講生は桐朋で勉強中の若い女性で、チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」を受講。若々しい溌剌とした伸びやかな音色で聴衆を魅了し、講師に「彼女のような素晴らしい才能のために、来年のマスタークラスはぜひ扉の閉まるホールのステージで」と言わしめました。気さくな講師は、口で伝わりにくい箇所では、自ら受講生の楽器を手にして手本を見せながらレッスン。同じ楽器だけに、「弾き手によってこんなに音色が変わるんだー!」と、私にとっては新鮮な驚きでした。レッスンは次第に、細かいボウイングの指示や音程の注意などの専門的なことへ移ったため、門外漢の私にはちんぷんかんぷんなところもありましたが、素晴らしいチェロの音を間近で浴びることができたひとときはとても楽しく、この日最もわくわくした時間を過ごしました。

こうして朝からマスタークラスを聴講し、この後、夜の有料公演を聴いて帰宅したのですから、本当に丸1日音楽三昧でした。比較してみると、ギターのクラスはやはり聴講生が少なく、内容的にも、プロ並みの受講生が出てきた他のクラスに比べれば、お祭りのイベントといった軽い感じだったことは否めないと思います。ギターの愛好家だけでなく、多くの音楽ファンや他楽器の演奏家をも満足させるくらいのレッスンが、来年以降も継続されれば良いなーと、個人的には思いました。そして逆に、今回のギターのレッスンのように、楽器を勉強している子供たちが一流の演奏家に学べるような機会が、ピアノなど他の楽器でも設けられれば最高だと思います。
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by yuko_kodama | 2007-05-11 19:31 | クラシック音楽の話

「熱狂の日」音楽祭2007

今年も行ってきました、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン~「熱狂の日」音楽祭。

5月4日に出かけ、朝から晩まで1日楽しみました。個人的な印象では、モーツァルト・イヤーということで盛り上がった昨年に比べると、若干落ち着いた雰囲気だったかな、という感じ。当日券のあるコンサートも、朝の時点では結構ありました。昨年は満員で入室できなかったマスタークラスの聴講も、今年は並ばずに着席できたし。ただ、全体のコンサート数も増えたようですし、来場人数としては昨年を上回っているのかな?

今年のテーマは「民族の調べ」。幅広い時代の幅広い作曲家が取り上げられ、バラエティに富んだプログラムでした。私が聴いたのは、バルトークの「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」と、4台のピアノに打楽器・合唱・4人の独唱を加えたストラヴィンスキーのバレエ音楽「結婚」という2曲を組み合わせたコンサート。どちらも特殊編成のため、めったに実際の演奏を聴く機会がありません。素晴らしい演奏を生で聴くことができ最高でした。

マスタークラスの聴講も、朝から4クラス。ギター、ピアノ、チェロと、それぞれの楽器のレッスンを楽しく聴きました。

また詳しい感想を書きたいと思います。
来年はシューベルトが取り上げられるとのこと。今から楽しみです。
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by yuko_kodama | 2007-05-08 00:33 | クラシック音楽の話