2007年 04月 23日 ( 1 )

富川勝智ギターリサイタル

4月20日(金)、現代ギター社のGGサロンに、富川勝智さんが満を持しての登場です。

宣伝チラシのプログラムを拝見したときから、ぜひとも聴きたいと思っていました。スペイン物で統一された、なんともお洒落なプログラム。どれも、実演に接する機会は多くないけれど、名曲ばかりです。そして当日、期待どおりの素敵なコンサートに大満足でした。

一言で言うと、「洗練」といった感じでしょうか。富川氏のセンスの良さが随所に表れていました。それは、もちろんプログラムであり、さらには楽曲の表現~フレージングや息遣い、それに芯のある温かいギターの音色・・・。特に、プログラムにおいては、「カスティーリャに始まり、バルセロナ、バレンシア、アンダルシアとスペインを一周するコンセプト」と明かされて納得。どれをとっても、「オンリーワン」と言えるものだと感じました。

1曲目は「カスティーリャ組曲」(モレーノ=トローバ)。出だしのファンダンギーリョには多少の緊張が見られたものの、続くアラーダの歌い出しの美しさと言ったら!ため息が出るようです。ゆったりとした歌と呼吸の間を、伸び伸びとした音で優雅につないでいきます。そして終曲の舞曲。緊張感が微塵も途切れることなく、特性的なリズムを表現して一気に聴かせ、1曲目から聴衆を自身の世界に引き込みました。
2曲目は同じくトローバの「特性的小品集」。全曲を生で聴くのは初めてのことで、ドキドキします。カスティーリャ地方の舞曲のリズムを取り入れたもの、民謡風と思われるものなど、様々なモチーフを散りばめながら、全曲を通して聴くことで初めて感じられる統一感を実感しました。やはり生の演奏の説得力はスゴイ。それぞれの曲の「特性」をうまく表現しているのは、やはり、かの地を実際に知っている強みでしょうか。さらに、前に弾かれた「カスティーリャ組曲」との組み合わせの妙。「カスティーリャ」というトローバの故郷を切り口としてその作品を並列することで、この作曲家の本質と魅力を十分に伝えることが出来たのではないかと感じました。
前半最後の1曲は、ブロトンズの「スケルッツォ Op47」。私は以前に一度、富川氏の演奏を聴いたことがあるのですが、初めての人にはびっくりするような曲であることは間違いないでしょう。現代曲ですが、非常にギターの特性をうまく伝えている作品で、現代的ではあっても聴く者を拒絶するような曲ではなく、むしろギターの可能性や面白さを伝えているのではないかと思います。(ギターとは縁のない私の母がはじめてこの曲を聴いたときに「面白い!」と喜んでいたのですから。)しかし、その魅力を十分に伝えているのが、奏者の力量であることには疑いがありません。イントロのハーモニックスの音が不明瞭だったのが少し残念ではありましたが、そのハーモニックスも、再現部では縦横無尽に曲の中を駆け回る表現になっていて、この曲の持つインパクトの強さとギター表現の面白さを楽しむことができました。

後半の演奏は、アセンシオの「バレンシア組曲」からスタート。アセンシオといえば「内なる想い」が有名で、「バレンシア組曲」は、私は録音でも聴いたことがなく、楽しみにしていた1曲です。そして、演奏は期待にたがわぬ素晴らしいものでした。アセンシオに独特の、不思議な深みを持つ和音が、氏の美しい音色でよどみなく構成されていきます。バレンシアを知らない私ですが、その美しい演奏は、安易な視覚的なイメージではなく、深い精神性を連想させるものでした。難曲とは思いますが、再演を切望します。
プログラム最後に演奏されたのは、E.S.デ・ラ・マーサの組曲「プラテーロと私」全曲。ノーベル文学賞を受賞したフアン・ラモン・ヒメネスの散文詩「プラテーロと私」に着想を得て作曲されたこの曲は、楽譜の冒頭に、楽曲に相当する部分の散文詩が書き添えられています。演奏は、その風景に違わぬ色彩鮮やかなものでした。とりわけ、冒頭の「プラテーロ」の幻想的な中間部や、「死」における冒頭のモチーフの劇的な再現が感動的でした。もちろん、「狂人」や「ダルボン」「亀」などでの、ちょっと不思議感が漂う曲想もまた面白く、最後の「故郷に眠るプラテーロ」まで、どっぷりと詩の世界を味わうことができました。

アンコールは「ラグリマ」(ターレガ)と「エストレジータ」(ポンセ)の2曲。特に、亡き師匠ホセ・ルイス・ゴンサレスの愛奏曲でもあった「エストレジータ」では、富川氏の歌心溢れる演奏に大感動。こういう、ため息の出るような表現がアンコールに出てくるっていうのは、本当にスゴイと思うのです。
ライブハウスなどでの活動も多い富川氏ですが、ぜひまた、こうした大曲の聴けるリサイタルを期待したいと思います。お疲れ様でした。


GGサロンコンサート「富川勝智リサイタル」
2007年4月20日(金) GGサロン 19:00

♪program
(第一部)
・カスティーリャ組曲(F.モレーノ=トローバ)
<Ⅰファンダンギーリョ Ⅱアラーダ(耕し歌) Ⅲ踊り>
・特性的小品集(F.モレーノ=トローバ)
<Ⅰプレアンブロ(序曲) Ⅱオリーブ畑 Ⅲブルガレサ Ⅳ5月 Ⅴ夜明けの唄 Ⅵパノラマ>
・スケルッツォ Op.47(S.ブロトンズ)

(第二部)
・バレンシア組曲(V.アセンシオ)
<Ⅰプレリュード Ⅱカンツォネッタ Ⅲ踊り>
・組曲~プラテーロと私(E.S.デ・ラ・マーサ)
<Ⅰプラテーロ Ⅱ狂人 Ⅲ屋上 Ⅳダルボン Ⅴ散歩 Ⅵ亀 Ⅶ死 Ⅷ故郷に眠るプラテーロ>
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by yuko_kodama | 2007-04-23 00:11 | ライブ、コンサートの話