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手塚健旨&高木洋子~ ピアノとギターのリサイタル

2006年5月26日(金)、横浜市の栄区民センター「リリス」ホールにて行われた、手塚健旨(g)と高木洋子(pf)のリサイタルへ足を運びました。

二人は、4月から5月初旬にかけてのスペインでの演奏旅行を成功させてきたばかりです。疲れはあったでしょうが、数多くの舞台をとおして磨き上げられた演奏を、日本のファンの前で余すところなく披露してくれました。
この二人の独自のレパートリーは、スペイン音楽と日本音楽をほどよくミックスした、聴きやすくも奥深いプログラム。今回初めて耳にする曲もありましたが、どれも澄みきったギターとピアノの音色で、情熱的に演奏されました。

プログラム最初はピアノとギターで、日本もの。
「竹取物語」は、ピアノ伴奏によるヴァイオリン独奏曲を、ギターとピアノ用にアレンジしたもの。プログラムの幕開けに相応しい、聞きやすくてさわやかなメロディが印象的でした。続いて演奏された「日本民謡メドレー」は、ソーラン節、相馬節、八木節の三つの日本民謡を、江部賢一がギター三重奏用として、メドレーに編曲したものです。ここではピアノとギターに再アレンジして演奏。八木節では、ピアノの高木が拍子木を打ちながら伴奏するシーンもあり、耳も目も楽しめる1曲でした。ディアベリの「華麗なる大ソナタ」は、ピアノとギターの音量のバランスも良く、その名にふさわしい「華麗な」演奏が聴かれたと思います。

前半最後は、手塚のギターソロで、E.サインス・デ・ラ・マーサの「暁の鐘」「ハバネラ」に、作者不明の「ムーアとジプシー」。
手塚のタッチは鋭く、ギター本来の音色にこだわり続ける姿勢がよく表れていました。愛器アルカンヘルは、この要求に存分に応えて、ちょっとしたタッチの変化にも敏感に反応し、他の人には添えられない独特のニュアンスを生み出していたと思います。「ムーアとジプシー」では、それらの要素と、スペインを知り尽くした手塚ならではの「らしさ」が発揮された、素晴らしい演奏が聴かれました。

プログラム後半は、高木のピアノソロからスタート。
先ほどギターソロで演奏されたE.サインス・デ・ラ・マーサの兄であるレヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサの作品を、彼女自身がピアノに編曲して演奏。「牧歌」「エチュード イ短調」は、レヒーノの代表的な作品ですが、小品でありながら大変な難曲で、ギターで弾かれる機会はないに等しいのが現状です。そうした中で、名曲を幅広く届けてくれるこうしたアイディアは、非常に歓迎されるべきものでしょう。
逆に、アルベニスの「朱色の塔」は、ギター愛好家ならば、ピアノ曲であるにもかかわらず、ギターで聴く機会のほうが圧倒的に多いと思います。今回の演奏に触れて、ギター演奏とはまた一味違う華麗さと色彩感を味わい、感動を新たにしました。

最後に再びデュオで、バカリッセのコンチェルトより「ロマンセとロンド」、F.クエンカの「鎌倉」のふたつの大曲が演奏されました。
バカリッセのコンチェルトも、演奏機会が限られた名曲。特に、ヴィルトゥオージティ溢れる作品群の中にあって、非常に感動的なメロディを配した「ロマンセ」は、私の大のお気に入りです。手塚の揺るぎない透きとおった音色が、曲の雰囲気にぴったり合っていました。
「鎌倉」は、F.クエンカが日本を訪れた折に、桜満開の鎌倉でインスピレーションを得て作曲されたもので、友人でもある手塚と高木に献呈されています。二人は、この日本風ともスペイン風ともいえる不思議な雰囲気の曲を、しっかりと手のうちにおさめており、リサイタルの最後を飾るに相応しい華のある演奏となっていました。

アンコールは、スペイン民謡「エル・ビート」と、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」から第2楽章が演奏されました。
こうした興味深いプログラムを組めるのも、スペインを始めとする各国での音楽祭に出演する二人ならではです。今後も、定期的なリサイタルの開催を期待したいと思います。
(敬称略)

手塚健旨・高木洋子 ギター&ピアノ リサイタル
2006年5月26日(金)
横浜市 栄区民文化センター リリス

♪program
・竹取物語 (貴志康一~手塚編)
・日本民謡メドレー (江部賢一編)
・華麗なる大ソナタ (A.ディアベリ)
・暁の鐘(E.サインス・デ・ラ・マーサ)
・ハバネラ (E.サインス・デ・ラ・マーサ)
・ムーアとジプシー (作者不明)
・牧歌/エチュード イ短調 (R.サインス・デ・ラ・マーサ)
・朱色の塔 (I.アルベニス)
・ロマンセとロンド (S.バカリッセ)
・Kamakura 鎌倉 (F.クエンカ)
by yuko_kodama | 2006-05-30 17:58 | ライブ、コンサートの話
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