NYフィルのセントラルパークコンサート
昨年は子どもが小さすぎて、行きたくとも行けなかったNYフィルの夏の野外コンサート。1年間、待ちに待ったコンサートに、ついに行くことができました。といっても、この日の演奏は、NYフィルと上海シンフォニー・オーケストラの共演であり、相変わらず上達しない私の英語力では、会場アナウンスを聴き取ることもできず・・・。どの曲をどのオケが演奏したのかなど、詳細は分からずじまいです。どちらにしろ、私は指揮者やオーケストラの違いを楽しめるほどの通ではなく、単純に音楽を聴くのが好きなだけなので、その意味では本当に楽しいコンサートでした。
コンサートは毎年、広いセントラルパークの中でも最も開放感のある広大な芝生広場「グレートローン」で行われます。午後8時開演ですが、私は友人たちと7時少し前に待ち合わせました。皆小さな子どもを連れていますので、熱心に聴きたい方の迷惑にならないよう、広場の隅っこの木陰に陣取りました。左右に置かれたスピーカーの、さらに外側という位置でしたので、音響には多少の不安がありましたが、オーケストラの音は問題なく(エコーなどが入らずに)聴くことが出来ました。 ところで、この日は1日中不安定な天気で、お昼には土砂降りの雨も降りました。そのためか、NYにしては珍しいくらいの湿気。おそらく湿度80%は超えていたでしょう。気温は高くありませんでしたが、肌にベタベタと汗がはりつき、東京の夏を思い出しました。オーケストラの方たち、特に高価な木製の楽器の奏者たちは、本当に大変だったことと思います。私はこんな日には、屋外でギターをケースから出すなんて、考えたくもありませんもの。 さて、コンサートは8時過ぎに、ワーグナーの歌劇「タンホイザー」の序曲でスタート。今日のプログラムは、聴きやすい有名曲が並んでいて、その後、上海からやってきた歌手によるオペラアリアが数曲続き、前半最後のハイライトはガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」。いかにも「NY」なこの曲を弾くピアニストは、世界中でひっぱりだこのラン・ラン!!私の座っていた位置からはほとんど姿が見えませんでしたが、広場の前方から大きな拍手が沸き起こり、ピアニストの登場を知らせてくれました。 残念ながらピアノの音色は、スピーカーを通して少しキンキンとした音になっており、また座った位置も悪かったせいで微妙なエコーがかかってしまい、疾走感や躍動感といった面でのランランらしさを感じるのは難しかったです。それにしても、「ラプソディ・イン・ブルー」が、こんなに野外コンサートに似合う曲とは思いませんでした。開放感たっぷりの芝生で、(こっそりと)ワインを頂きながらの鑑賞。周囲はすでに日が暮れて暗くなり、蛍(日本の蛍とは全然違う虫ですが、光りながら飛ぶので「蛍」と呼んでいます)がちらほらと飛んでいて、本当に良い雰囲気です。叩きつけるように音符が並んだパートも、しっとりとロマンティックに聴かせるパートも、すべてが、この夏の夜の雰囲気に合わせて作曲されたかのように思えるほどでした。この夜、私が最も楽しんだ一曲でした。 第2部は、30分以上の長~~い休憩を挟んでのスタート。チャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」から「ポロネーズ」のあと、バーンスタインの「ウェストサイド・ストーリー」から「シンフォニック・ダンス」。今夜聴きに来た理由のひとつは、「ラプソディ・イン・ブルー」と並んで、最もNYらしい曲のひとつ「シンフォニック・ダンス」が聴けるからでした。以前にこのブログでも感想を書きましたが、私はリバイバル上演中の「ウェストサイド・ストーリー」を見に行きましたので、それぞれの曲にミュージカルの場面が重なり、とても楽しい。もっとも、この「シンフォニック・ダンス」は、ストーリーとは関係なく、コンサートで演奏されることを前提にバーンスタイン本人が編曲したものなので、各曲はミュージカルのストーリーとは全然違う順番で並んでいるのです。それがまた面白い。音楽的に並べると、静かな曲、盛り上がる曲、リズミックな曲・・・こういう順番がスッキリするんだな~~なんて思いながら聴きました。 プログラムの(おそらく)最後は、ラベルの「ボレロ」。この「ボレロ」は、私にとってはとても親しみがあり、また思い入れの深い曲でもあります。手塚健旨先生のギターアンサンブル「カンパニージャ」では、この曲をギターアンサンブル用に編曲してレパートリーとしており、私も何度も演奏しています。演奏するたびに、異なるパートを弾いていましたので、色々な思い出があるのです。オーケストラの色々な楽器の音色を聴きながら、この曲をギターの音色のみで表現していくことの難しさと面白さ、そして、そんな素晴らしいことを思いつく手塚先生の感性に思いを馳せていました。私は、とても良い師匠に恵まれたと思います。 後半の演奏は、芝生広場の周りをベビーカーを押しながら散歩しての鑑賞となりましたが、それでも夜10時半過ぎまで付き合ってくれた幼い娘に感謝。「ボレロ」の盛大なフィニッシュに大きな拍手を送り、おそらく1曲は演奏されたであろうアンコールは諦めて、家路につきました。大変満足のいく一夜でした。 イベント詳細はコチラ http://nyphil.org/meet/archive/index.cfm?page=eventDetail&eventNum=2163&seasonNum=9&archive=1
by yuko_kodama
| 2010-07-16 12:04
| ライブ、コンサートの話
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クラシックギタリストです。
現在、読売カルチャー横浜校講師。 ギターアンサンブル「カンパニージャ」「オリエンタル」メンバー。 子ども向けウクレレ&ギターユニット「フェザーテイル」メンバー。 プロフィール 5才からピアノを習い、18才でクラシックギターに出会う。以後現在に至るまでギターを手塚健旨氏に師事。2001年~2003年スペインへ留学、マリア・エステル・グスマン氏に師事。 最新の記事
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